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Anti Thrombotic Therapy.2016

出血性合併症の多い日本人に適した抗血小板療法とは
東海大学医学部循環器内科教授 後藤信哉氏 

2011/01/14

東海大学医学部循環器内科の後藤信哉氏

CSPS IIの試験結果を受けて、今後の抗血小板療法のあり方が注目されている。そこで、リスクとベネフィットを考慮した抗血小板療法の実際について、東海大学医学部循環器内科教授の後藤信哉氏(写真)にうかがった(日経メディカル別冊)。

■抗血小板薬による血栓形成抑制の機序

 血小板の凝集・活性化による血栓形成を抑制するのが抗血小板薬の働きです。例えば、アスピリンはトロンボキサンA2の産生を阻害することで、チエノピリジン系の抗血小板薬はADP受容体を阻害することで、血小板の活性を阻害します。

 一方、生体における血小板の重要な役割は、止血作用です。したがって、抗血小板作用のみで心筋梗塞や脳梗塞の発症を抑制しようとすると、抗血小板作用の強さに応じて出血性合併症が増えることになります。すなわち、抗血小板作用が強くなればなるほど、脳梗塞の発症は減るかもしれませんが、その分、脳出血が増える危険性は高くなるのです。

■抗血小板薬の限界とジレンマ

 抗血小板薬を投与することで、個々の患者さんが利益を得られるか否かは、誰にも分かりません。目の前にいる患者さんに、抗血小板薬を投与した場合、脳梗塞を予防するのか、出血性合併症を起こすのかは、医師にも分からないのです。われわれが言えることは、脳梗塞の危険因子を持っている多くの患者さんに抗血小板薬を投与すると、統計的には利益の方が大きいというエビデンスがある、ということです。

 つまり、抗血小板薬のメリットとデメリットを患者さんに十分にご説明し、ご理解をいただいた上で、患者さん自身が服用の可否を選択しなくてはならず、この点が、抗血小板薬を使っている限り、離れられないジレンマということになります。

■CSPS IIの試験結果が示す抗血小板療法の新たな可能性

 血小板だけが、血栓性イベントに関与しているわけではありません。19世紀ドイツの有名な病理学者、Virchowが提唱しているように、血栓性イベントの発症には、血液成分、血流、血管壁の3要因の状態が非常に重要です。したがって、血液成分である血小板だけを強力に抑制しても、その効果に限界があることは複数のエビデンスで示されています。つまり、血小板機能を抑制するとともに、血流や血管壁の状態も改善して、トータルに血栓性イベントを抑制することを考えた方がよいのではないでしょうか。

 Virchowの指摘を考慮すると、血小板に作用して抗血小板作用を発揮するとともに、血管内皮細胞や平滑筋細胞にも作用するシロスタゾールは、単に血小板のみに作用する他の抗血小板薬とは、メリットとデメリットのバランスが異なっている可能性があると思われます。

 脳梗塞患者(2672例)においてシロスタゾールとアスピリンを比較検討し、シロスタゾール群において全脳卒中の発症が有意に少なかったことを示したCSPS(Cilostazol Stroke Prevention Study)IIの成績は、その可能性をエビデンスとして明らかにしたと言えるのではないでしょうか(図1)。

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