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腎機能を確認せずに造影CTを行うのは罪?

2018/07/19
薬師寺 泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 先日、日本医療機能評価機構が公表している「医療事故情報収集等事業」の報告書で、造影CTの施行に関する注意喚起がされていました。ビグアナイド系経口血糖降下薬(メトホルミン)は、ヨード造影剤と併用すると乳酸アシドーシスを起こすことがあり、ヨード造影剤を用いた検査を行う場合にはビグアナイド系経口血糖降下薬の投与を一時的に中止することが必要であるとされています。添付文書にも、投与前には中止しておくことと、検査後48時間は内服を再開しないことが記載されています。

 報告書では、去年から今年にかけて、造影CT前後にビグアナイド系経口血糖降下薬を服用させてしまった3件について医療事故の原因の考察を行っています。検査後内服の一例で急性腎不全となり、緊急透析にまで至った例も提示されています。どのくらい因果関係があるのでしょうかということは置いておいて、関与が疑われている検査を積極的に施行するのはためらわれるというのが自然な感情だと思います。

 ただ、ここに因果関係があるかは、なかなかセンシティブな問題です。そもそもどうして造影CTの時にビグアナイドが禁止になったかというと、ビグアナイドを内服している人に起こった乳酸アシドーシス症例を検討したところ、腎機能が低下した人で起こりやすいという特徴があったからということのようです。腎機能低下時にはこの薬剤は禁忌なわけですが、造影CTを行うと糸球体濾過量が低下し、腎機能の低下に拍車がかかると考えられたようです。ですから、因果関係がはっきりしているわけではありません。

造影罪!?
 造影CTといえば、「造影剤腎症」と呼ばれるものがこの世には存在していますよね。造影剤腎症ってなんですか?と聞かれてスパっと答えられる人は意外と少ないかもしれません。1989年のNEJMで、造影剤を使用した検査後に、15%の患者で血清クレアチニン(Cr)レベルが0.5mg/dL以上上昇しているという報告がされています( N Engl J Med 1989;320:149-53.)。

 これを受けてか、日本の「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン」では造影剤腎症を「0.5mg/dL以上又は25%以上のCr上昇」と定義付けています。ただ、文献によって造影剤腎症の定義はまちまちで、頻度調査も検査後数週間後まで含んだものもあります。やはり、分かっているのは前後関係で、因果関係については不明確というのが現状だと思われます。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年からいきなり管理職。地方二次救急病院で診療しながら、岡山大学の高度救命救急センターでますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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