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第11回
太陽は足りているか?─ビタミンDの話

2017/10/02
村川 裕二(帝京大学溝口病院)

 『光あるうちに光の中を歩め』
 トルストイの短編。
 何を言いたかったのだろう。
 読んでないから、知りません。
 30余年前、医師国家試験を受けたとき……。
 「陽の当たらない部屋のおばあさん」のことが出題されました。
 食べて、歩いていたのに、「やがて寝たきり」。
 なぜ?
 日光に当たっていない→ビタミンD不足→骨が弱った
 というストーリーでした。
 試験会場から帰る道すがら。
 同級生の山田君が、「講義でやった症例だね」と言いました。
 講義に出てないから記憶にないけど、「そうだね」と返事しました。
 で今回は、<日光・ビタミンD・心臓>についての話。

どう作られる

 ビタミンDとして機能するのは活性型ビタミンD3
 作る経路は
 ●皮膚が日光の紫外線に当たってできる経路
 ●腸管から吸収
 の二つ。
 どっちがどのくらい貢献するのか?
 尿酸だと、食事から5分の1で、体内産生が5分の4というあたりが目安。
 一方、ビタミンD。
 腸管からたくさん入ると、日光由来の分が減ります。
 そういう事情なのか、1:1とか、3:1というような数字を見つけられませんでした。
 陽に当たらないと、普通に食事していてもビタミンD不足あり得ます。

そのあと温める

 ビタミンDの前駆物質は、7-デヒドロコレステロール。
 コレステロールの一族で、体内にたくさんあります。
 大安売りなのか、皮膚の表面にもいっぱい。
 7-デヒドロコレステロール(=プロビタミンD3)+太陽→プレビタミンD3
 <プロ>と<プレ>はどっちも「前」。だけど、<プレ>のほうが“直前”という雰囲気。
 オリンピック直前に開かれる競技会は、「プレオリンピック」。
 今にもショックになりそうなら、「プレショック」。
 面白いのは、プレビタミンD3がビタミンD3になるプロセス。
 酵素も何もなくても、「時間が解決」。
 体の中で温めておくと、12日ほどしてビタミンD3に変わります。

水酸基・その一

 ビタミンD3はそのままでは活躍できません。
 「水酸基・OH」を2個くっつけて活性型になります。
 ●1個目→肝臓で25位の炭素にOH→25(OH)D
 ●2個目→腎臓で1位の炭素にOH→1,25(OH)2D
 どこで「OH」をもらうかは、生化学や生理学の試験に出ます。
 ともあれ、肝臓が悪くても腎臓が悪くても、活性型ビタミンD3の生成に影響します。
 肝機能障害が重症化すると25(OH)Dが作りにくい。
 さらに、胆汁分泌が低下すると食事中のビタミンDの吸収も低下。
 さらにさらに知らなかったけど、
 ●脂肪酸の腸管吸収が低下→腸管の中で脂肪酸がカルシシウムイオン(Ca2+)と結合→いっそうCa2+を吸収しにくいという話もありました。
 この状態は「肝性骨異栄養症」と呼ばれます。 
 不都合はいろいろな経路で生じる。

水酸基・その二

 腎臓は、ビタミンDを活性型にするための<最後の仕上げ>。
 近位尿細管にある1α-水酸化酵素の出番。
 2個めのOH基が加わって、1,25(OH)2-D3になります。
 何だか、七五三のとき、パパ方祖父母とママ方祖父母によってたかって着飾らせる感じ(冒頭のイラスト)。
 

著者プロフィール

村川裕二(帝京大学附属溝口病院第四内科・中央検査部教授)●むらかわゆうじ氏。1981年東京大学卒。83年同大第二内科入局。89年関東中央病院内科、91年東京大第二内科助手を経て2003年帝京大附属溝口病院第四内科助教授。04年同教授。16年中央検査部教授を兼務。

連載の紹介

村川裕二の「ほろよいの循環器病学」
某医学雑誌で10年以上、循環器病学の連載を続けてきた筆者の名コラムが、場所を移して“新装開店”。堅い話になりがちな最新医学の話題をゆるゆる、まったり解説。穏やかな語り口に引き込まれながら、読みふけってしまう。肩肘はらず、グラスを傾けながら、たそがれ時のお供に。イラストも筆者のオリジナル。

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