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【連載第43回】
社宅から追い出された男の物語

2007/11/29

 N夫が駐在員になって2年半が過ぎた。N夫が勤務するのは外資系製薬会社で、支店は全国に9カ所のみ。MRは全員、駐在員として勤務する仕組みになっている。

 会社は駐在員に対して、独身者は2LDKの家を、妻帯者に対しては3LDKの家を借り上げ、社宅として貸与している。N夫は独身なので、リビング以外の1部屋を寝室に、もう1部屋を販促資材置き場として使っていた。

 販促資材は、多くは印刷物だが、ブランド名が刻印されたボールペンなどの「サービス品」も時に本部から送られてくる。特に新製品の発売時には、たくさんの種類の印刷物とサービス品が大量に送られてくるため、4畳半の部屋がダンボール箱の山ですぐにいっぱいになってしまう。そのため、いざ必要な販促資料を探そうとすると、しばしばどこに何があるのか見付からないことがあった。

 N夫は昼間は家にいないため、本部から届く販促資材は運送会社の営業所止めにしてもらっていた。定期的に仕事帰りに営業所に寄って、販促資材を受け取り、家に持ち帰っている。だが、サービス品でティッシュペーパーが届いた時は、いつも大騒ぎになる。ダンボールが大きい上に量が多いので、1回では車に積め込めず、何回か往復して家に運び込むことになるのだ。

 今日も帰りに運送会社の営業所に立ち寄ると、ティッシュペーパーではないが、サービス品が大量に届いており、車の後部座席が埋まってしまうほどの大荷物だった。「早く先生方に配らないと、もう奥の部屋に入らなくなってしまうな」。N夫はそう考えながら、荷物を車の後部座席から降ろし、明日の行動予定を考えるのだった。

著者プロフィール

小原公一(OBC研究所代表)●おはら こういち 氏。1965年法政大経済学部卒。複数の製薬会社で、学術企画部長、取締役営業本部長などを歴任後、2003年OBC研究所を設立。製薬企業の営業戦略策定などを手がける。

連載の紹介

MRのキモチ
いつも低姿勢で医局周辺をウロウロ—。そんな印象のMRですが、実は、医療機関や医師の“生態”に一番詳しいのも彼ら。MRが体験した、面白くてちょっぴり悲しいエピソード集。

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