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駆け込みドクター!(6/22 19:57~、TBS系列)から
「冷や飯」だと血糖値が上がりにくい!?

2014/07/02

 先週はなぜか、健康番組がどこもかしこも糖尿病を取り上げていました。糖尿病週間は11月ですし、どこかで誰かが糖尿病のキャンペーンでも仕掛けてるんでしょうか。

 厚生労働省の国民健康・栄養調査によりますと、「糖尿病が強く疑われる人」の890万人と「糖尿病の可能性を否定できない人」の1320万人を合わせると、全国に2210万人の糖尿病患者(らしき人)がいるとのこと。前回取り上げた膝の痛みの推定患者数が1000万人なので、その倍以上いることになります。

 TBS系列「駆け込みドクター!」(6/22放送)でも血糖値を取り上げていました。世のダイエットで血糖コントロールが流行ってるようで、糖尿病ではなく「血糖値」をテーマにしているのがミソです。タイトルは「脱・高血糖のススメ」。内容は、糖尿病疑いの人に、糖質コントロールを勧める内容になっていました。

 ですが、日本糖尿病学会も、昨年3月に出した提言で触れているように、糖尿病患者の炭水化物摂取量の制限の是非は、まだ結論が出ていません。でも番組では、「糖尿病」ではなくて「高血糖」に対する糖質制限と言い換えたことで、この問題は華麗にスルーしちゃってます。

 ちょっと話はずれますが、この番組でもそうだったように、「糖質制限=糖質ゼロ」みたいな物言いをするから、議論がかみ合わないのではないか、と筆者は常々思っています。肉でも、魚でも、野菜でも、実際には多くの食品に少なからず糖質は含まれています。塩鮭一切れ100gにも0.1g程度の糖質は含まれていますし、キャベツ1枚50gにも1.7g程度の糖質は含まれています。そこを無視して、「糖質ゼロは安全性が確立されていない」といった議論をすることは、無意味なのではないでしょうか。本当に糖質ゼロにするのは、絶食しないとほぼ不可能なんですから。

 閑話休題。番組では、高血糖の初期症状として神経障害を挙げていいて、その一例として「熱さを感じにくくなる」という表現も出てきました。たしかに糖尿病の合併症の中では、網膜症や腎症よりも、神経障害は先に出るとされてはいます。でも、糖尿病とは診断されていない「高血糖」の話をしているわけで、口渇、多飲、多尿、体重減少といった症状ならまだしも、熱さを感じにくくなるような、それなりに高度な神経障害を初発症状として扱ってよいのでしょうか。

 続いて、糖尿病が発覚したタレント小力さんの治療の例として、食事療法によるカロリー制限を紹介していました。あれ? さっきは、カロリー制限ではなくて糖質制限の話をしていませんでした? 小力さんは既に糖尿病と診断されているから、総カロリーの議論にすり変わったのでしょうか。せっかく糖質制限をフィーチャーするなら、1日の必要カロリーではなくて、1日に必要な糖質量を教えてほしかったですね。残念です。

 その次は、食後高血糖の話。空腹時血糖値は正常でありながら、食後に高血糖を示すのを「隠れ高血糖」と紹介していました。その発見法(?)として、番組では1,5-AG(アンヒドログルシトール)の検査で分かると強調して紹介していました。

 少し前から、1,5-AGを使って食後高血糖を管理するという方法は提唱されています(関連記事)。食後高血糖があるかどうかを調べるなら、OGTT(経口糖負荷試験)を調べた方がいいんじゃないかという話もありますが、1,5-AGの方が、患者も医師も手間が省けるのがメリットです。保険適用もされていますし。

 番組では、この1,5-AGを「イチゴーエージー」と読むことも説明していました。一般の人に、どのくらい1,5-AGが喧伝されているのか分かりませんが、Webの情報では読み方まで書かれていないことも多いようなので、診察室で突然「イチゴーエージーを測ってください」と主張する患者がいたら、“駆け込みドクター効果”かもしれません。

 で、最後は、高血糖によい食事法の紹介です。豆乳がいいとか、酢がいいとか、古くて新しいネタが紹介されていました。あと、炭水化物は冷たくして食べた方が、血糖値上昇を抑えられるそうです。デンプンは、冷えるとレジスタントスターチという「消化されないデンプン」になる、とのこと。

 このレジスタントスターチという概念、この業界(?)ではそれなりに有名なようで、ググるとたくさんヒットしてきます。お米ならおにぎりやお寿司、パンならサンドイッチ、などという、まことしやかな説明も出てきました。臨床的なエビデンスは、、、もちろん見当たりませんでした。

 個人的には、冷やご飯だと、食が進まなくて糖質摂取量(カロリー摂取量も)減る、という方が理解しやすい気もします。あ、でも、おにぎりもおいしいかも。お寿司の酢飯は、もっと効果的?

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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