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トレンドビュー◎給食でアナフィラキシー
食物アレルギーによる死亡事故はなぜ起きた?

 昨年末、東京都調布市の小学校で食物アレルギーの既往のある小学5年生の女児が給食後にアナフィラキシーショックを起こして死亡した。この事故を受け、文部科学省や厚生労働省、日本アレルギー学会などが、委員会を設置して再発予防のために動き始めている。

「違う、打たないで」とSさんは言った
 2012年12月20日。この日の給食のメニューには、粉チーズ入りの「じゃがいものチヂミ」が含まれていた。牛乳、乳製品によって重篤なアナフィラキシー症状を起こす可能性が高いSさんには除去食が用意されており、Sさんは調理員から直接除去食を受け取って食事をしていた。

 給食が終わりに近づき、余ったじゃがいものチヂミを担任が教室で生徒に配っていたところ、Sさんが担任に「欲しいです」と声をかけた。担任は食べても問題がないのかを確認するため「大丈夫か」と尋ねた。Sさんは、保護者が念のために持たせていた献立表でアレルギーを起こす可能性がある食べ物として印が付いていないことを示した。そこで担任は、Sさんにじゃがいものチヂミを提供し、12時57分に給食時間が終了した。

 給食から約25分後、Sさんから担任へ「気持ちが悪い」との訴えがあった。そのときSさんの顔は紅潮しており、喘息発作用に処方されていた薬剤の吸入器を口に当てて苦しそうにしていた。そのため、担任はSさんのランドセルからエピペン(一般名:アドレナリン)を取り出し、「これを打つのか」と確認をした。しかし、Sさんから「違う、打たないで」と言われたため、打たなかった。その後、13時30分に養護教諭が駆けつけ、喘息発作が強く出ていると判断し、救急車を要請するように促した。

 担任は、救急車を要請した後に栄養士に献立を確認し、Sさんの症状が食物アレルギーによるアナフィラキシーだと認識した。保護者に電話で、誤食をした後に強い喘息発作を起こしているため、救急車を要請したと伝えたところ、エピペンを打つよう求められた。

 一方、養護教諭は、Sさんが「トイレに行きたい」と言うものの、自力では立てない状態だったため、Sさんを背負ってトイレに向かい、便座に座らせた。その時点で、Sさんは呼びかけに返事をせず、顔面蒼白な状態になっていた。

 校長が13時36分に現場に駆けつけたが、Sさんは便座にもたれかかるように座っていた。呼吸をしている様子はなく、手首での脈拍は認められなかった。校長は、Sさんの右大腿部外側にエピペンを打ち、床に仰向けに寝かせた。心肺停止状態だったため、養護教諭が心臓マッサージ、担任が人工呼吸を始めた。

 13時40分ごろに救急車が到着し、校長が同乗して杏林大病院へ出発した。しかし16時29分に死亡が確認された──。

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