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大臣無視し官僚が既成事実化を目論んだ?
意味不明な事故調法案大綱の発表

舛添厚生労働大臣の「法案化した形を示せば改善すべき点が明らかになる」というコメントは苦しい。

 厚生労働省は6月13日、医療安全調査委員会の設置のための法案のたたき台となる「医療安全調査委員会設置法案大綱案」を発表した。法案の詳細は既報の通り(2008.6.13 厚労省が「事故調」設置法案の大綱案)、基本的には4月に厚労省より発表された第三次試案の内容を踏襲したものだ。

 新聞などの報道では「今秋の臨時国会での成立を目指す」などと報じられており、このまま法案化が進められるかのようにも受け止められる。しかし、これはあくまでも第三次試案のまま法案を書くとこうなる、といったことを示したに過ぎず、今後の修正も十分あり得る。

 実際、舛添厚生労働大臣は今回の「大綱案」について、「第三次試案を法案化するとこうなるという形で示したもので、これで今後改善すべき点が明らかになる」と述べている。そして、「今後、第四次試案が作成されるときにも、同様に法案化した形を示して、広く意見を聞く予定である」という通り、今後四次試案を作るべく、引き続き意見を募集し、与野党の協議を深めていく方針だ。

よく分からない大綱発表の意義
 さて、この発表には首を傾げたくなる点がある。なぜ、このタイミングで、かつ「大綱案」という法律の原案のような形にしてわざわざ発表したのかということだ。舛添大臣の上記コメント通り、政府が第四次試案を考えているのであれば、第三次試案の内容で大綱を作り、わざわざ世に出す意図が分かりにくい。

 まず、大臣コメントにあるように、政府が第四次試案作成に向けて議論を深めたいのであれば、パブリックコメントから導き出された論点を再整理し、提示して議論の土台を整えることが先決だ。しかし、それを通り越して、「第三次試案に基づき法案化したイメージ」を発表した。当事者たる医療者側も患者側も、与党も野党も、事故調の“中身そのもの”について議論を続けているのであり、法律の構成や法文の表現についての議論をしているわけではない。「法案化した形を示せば改善すべき点が明らかになる」という大臣のコメントは苦しい。

 そもそも、大臣は第三次試案による法案化に慎重な姿勢を取っていた。5月23日の閣議後記者会見で大臣は、「与野党みんなが一致できる法案であったほうがいい」と語っており、事実上、現状のままでの法案化はしない構えを見せていた。事実上というのは、野党である民主党が、医療事故調査制度作業チーム(事務局長:足立信也氏)作成の民主党案を発表する直前段階にあり、与野党の議論がこれからスタートする段階であることを大臣は認識していたからにほかならない。

 実際、6月11日に公表された民主党案では、届け出の基準や事故調の介入の仕方などについて第三次試案と明らかな違いがある。これから与野党や医療界などを巻き込んだ議論がさらに続くことが明白なこの段階で、法案化しておくことに何の意味があるのだろうか。ましてや、第四次試案が出たときに新しく大綱を作るのであれば、第三次試案を基に大綱を作成した労力は無駄になりかねない。

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