日経メディカルのロゴ画像

Lancet誌から
イバブラジンは心拍数が高い慢性心不全患者の心血管イベントを減らす

 ガイドラインに沿った治療を受けているが、安静時心拍数が70拍/分以上の慢性心不全患者にイバブラジンを投与した無作為化試験SHIFT(the Systolic Heart failure treatment with the If inhibitor ivabradine Trial)の結果が、2本の論文となってLancet誌2010年9月11日号に報告された。偽薬群に比べイバブラジン群では、心拍数は低下し、心血管死亡または心不全悪化による入院が有意に少なかった。イバブラジンの利益は、ベースラインの心拍数が最も高い患者群で最も大きかった。

 過去20年間の薬物療法の進歩により、心不全患者の転帰は改善されている。しかし現在でも、予後良好からはほど遠い状態にあるため、新たな治療法の登場が待たれている。

 安静時の心拍数高値は、高血圧、冠疾患、慢性心不全の患者のみならず一般集団においても、心血管イベントの予測因子と見なされている。心不全患者を対象とする研究は、心拍数が、全死因死亡、心血管死亡、心不全による入院と直接関係することを示唆している。心不全治療に用いられているβ遮断薬は、心拍数低下作用も持つが、心拍数の上昇を生じることもある。

 心臓洞結節のペースメーカー電流であるIf電流を特異的に阻害するイバブラジンは、β遮断薬とは異なり、心筋の収縮性や刺激伝達系に影響を与えない。著者らは、心血管アウトカムに対するイバブラジンの影響を調べる二重盲検の国際的な無作為化試験SHIFTを、ガイドラインに基づく治療を受けている慢性心不全(収縮不全)患者を対象に実施した。

心血管死亡または心不全悪化による入院が有意に減少
 1本目の論文では、スウェーデンGothenburg大学のKarl Swedberg氏らがSHIFT試験の主要な結果を報告している。

 37カ国の677施設で、06年10月3日から09年6月1日まで患者登録を実施した。症候性の中等症~重症の心不全で、左室駆出分画が35%以下、洞調律の心拍数が安静時に70拍/分以上あり、過去1年間に心不全による入院歴を有する18歳以上の患者のうち、β遮断薬を含む適切な治療を4週間以上受けていた6558人(平均年齢60.4歳、半分がNYHA分類のクラスII、残りの半分がIIIまたはIV)を登録。無作為にイバブラジン7.5mgを1日2回(3268人)、または偽薬(3290人)に割り付けた。イバブラジン群の開始用量は5mgを1日2回とし、14日間で7.5mg1日2回まで増量した。徐脈が認められた場合には用量を半減した。

 主要エンドポイントは、心血管死亡または心不全の悪化による入院からなる複合イベントに設定、intention-to-treatで分析した。

 追跡は10年3月末まで行われた。追跡期間の中央値は22.9カ月だった。

 分析に必要な情報が得られたのは、介入群3241人、対照群3264人。ベースラインの心拍数の平均は79.9拍/分、左室駆出分画の平均は29.0%だった。89%がβ遮断薬の投与を受けていた。

 割り付けから28日時の心拍数は、ベースラインに比べイバブラジン群で15.4拍/分低下。偽薬群の低下幅で調整すると、介入による低下は10.9拍/分と考えられた。介入による1年後の低下は9.1拍/分、試験終了時は8.1拍/分だった。

この記事を読んでいる人におすすめ