吸入抗コリン薬は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に広く適用されているが、近年、臭化イプラトロピウムがCOPD患者の心血管リスクを幾分か上昇させるという報告がなされている。そこで、米Wake Forest大学のSonal Singh氏らが、抗コリン薬(臭化イプラトロピウムまたは臭化チオトロピウム)と心血管リスクの関係を調べるために系統的レビューとメタ分析を行った。その結果、抗コリン薬を使用しているCOPD患者では、対照群に比べて心血管リスクが58%高まることが明らかになった。6カ月を超えて使用した群では、リスク上昇は73%に上った。詳細は、JAMA誌2008年9月24日号に報告された。
著者らは、2008年3月19日に、文献データベースや、英米で医薬品の承認を担当している監督当局のウェブサイト、製薬会社が保有する全ての臨床試験データなどを対象に調査を実施し、COPD患者に抗コリン薬または偽薬か実対照薬を30日以上投与し、心血管イベントについて報告していた無作為化試験を選出した。COPDの重症度は問わなかった。
条件を満たした研究は17件あった。すべて二重盲検で、12件がチオトロピウム、5件がイプラトロピウムを用いていた。対照群には、9件が偽薬、8件が実対照薬(吸入サルメテロール、サルメテロール/フルチカゾン合剤、吸入アルブテロール)を用いていた。
試験期間は6週から5年だった。17件の登録患者数は計1万4783人。うち吸入抗コリン薬投与群は7472人、対照群は7311人だった。心血管アウトカムの評価を目的として設計された試験はゼロだった。
主要アウトカム評価指標は、心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中(一過性脳虚血発作を含む)を合わせた複合エンドポイントとし、二次評価指標を全死因死亡に設定した。
この結果、複合イベント発生は、抗コリン薬投与群の135人(1.8%)、対照群の86人(1.2%)に発生。相対リスクは1.58(95%信頼区間1.21-2.06、p<0.001)と有意だった。I2=0%で統計学的不均質性は見られなかった。
複合エンドポイントを構成する個々の項目では、心筋梗塞と心血管死亡のリスク上昇が有意だった。心筋梗塞の相対リスクは1.53(1.05-2.23、p=0.03、I2=0%)、心血管死亡は1.80(1.17-2.77、p=0.008、I2=0%)。一方、脳卒中のリスク上昇は有意でなかった(相対リスク1.46、0.81-2.62、p=0.20、I2=0%)。
全死因死亡は、抗コリン薬群149人(2.0%)、対照群115人(1.6%)に発生。相対リスクは1.26(0.99-1.61、p=0.06、I2=2%)で有意差はなかった。
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