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医療事故調スタートから半年、筑波大病院で意見交換会
医療事故調報告、想定よりも少ないのはなぜ?

登壇した4人の有識者。左から、満岡内科・循環器科の満岡渉氏、医師・弁護士の田邉昇氏、茨城県医師会副会長の石渡勇氏、日本医療安全調査機構常任理事の木村莊介氏。

 「医療法に基づく医療事故調査制度に関する意見交換会」が3月19日に筑波大学附属病院で開催された。第三者機関、都道府県医師会、弁護士、臨床医など、様々な立場の関係者がパネラーとして登壇し、この半年を振り返りつつディスカッションを行った。

 第三者機関「医療事故調査・支援センター」からは、日本医療安全調査機構常任理事の木村莊介氏が登壇し、制度スタートから半年の状況について報告した。木村氏は、制度開始から2016年2月までの5カ月間に累計871件の相談があり、相談内容は「医療事故の判断に関すること」「医療事故の報告手続きに関すること」「院内事故調査に関すること」がそれぞれ4分の1を占めていたことを説明した。特に判断が難しく早急な検討を要する事例については、医師3~4人、看護師3~4人で合議し、その結論をセンターからの助言という形で回答しているという。

 木村氏の印象として、センターに相談されてくる事例は、(1)血液データや画像診断などの検査結果や、処置前の患者状態を相談前に十分に確認していない、(2)高齢者で合併症があるようなハイリスク患者を対象にしていたり、高難度や高侵襲の処置が多い、(3)患者の死亡を予期していたかどうかに関して、事前の説明や診療録の記録がなされていたかが検討されていない、(4)推定死亡原因を検討していない――といった傾向があるという。「医療事故が発生した時点にのみ注目するのではなく、事例の全体像を俯瞰するようにしていただきたい」とアドバイスした。

 次いで、2016年2月までの5カ月間に累計140件の医療事故がセンターに報告されたことを公表した。当初の予想である1300~2000件と比べて報告件数が少なかったことについて木村氏は、制度自体への理解が不十分であること、自ら判断することに難渋していること、制度が報告対象としている医療事故は過誤の有無を問わないはずだが、「医療事故」として報告することに抵抗感があること――などを指摘した。「遺族が何も言ってこなければ報告しなくてよいという考え方がいまだ存在するのではないか。『Claim Oriented』から『Event Oriented』に脱却してほしい」と指摘。医療事故に対する考え方を切り替える必要があると話した。

 実際に各医療機関から提出された報告書は5カ月間で33件だった。木村氏は報告書で目立った問題点として、(1)院内調査を実施した構成委員に関する記述がない、(2)病院のシステムなど事故原因の背景に関する記載がない、(3)死因の検討がなされていない――などを挙げた。


県内の支援マニュアルを作成
 茨城県医師会副会長の石渡勇氏は、茨城県内での医療事故調査制度への体制を紹介した。茨城県では、県医師会が調整役となり、病院や大学、医師会、病院団体、学会、剖検施設、Ai施設、弁護士会、歯科医師会、助産師会、看護協会などの代表者約30人から構成される支援団体連絡協議会を発足。医療事故発生の際には最終的に茨城県医師会に報告される仕組みになっている。

 制度開始前には、「院内事故調査の支援マニュアル茨城版」の作成のほか、県医師会内への相談窓口を設置、解剖や死亡時画像診断(Ai)に協力する機関の指定とリストアップなどを行った。外部委員として派遣される医師は茨城医学会やモデル事業の登録専門員から50人ほど指定して一覧にしたという。

 院内事故調査では必要に応じて解剖を行うことがあるが、茨城県では病理解剖支援委員会を筑波大学附属病院の病理部内に設置。4施設が持ち回りで解剖支援を行う体制を構築している。自施設で解剖が実施できる場合であっても同委員会で最終的に病理解剖の結果報告書をまとめている。病理解剖を行わず、Aiを撮影した場合は、読影をAi読影を専門に行っている施設(Ai情報センターなど)に依頼することを原則としていることも説明した。


田邉氏「ICは患者との信頼関係や医療安全の観点からも重要」
 医師・弁護士の田邉昇氏(中村・平井・田邉法律事務所)はインフォームドコンセントの重要性を強調した。事前に患者に対し、死亡という最悪のシナリオを含めて十分に説明することで、患者も覚悟を持てるほか、患者と医師間に会話が生まれ、信頼関係が構築される効果が期待できると指摘。医師も術後の合併症などを予期することで、後手に回らない対応が可能になるというメリットがあると田邉氏は説明した。「患者に死亡リスクを十分に話すというインフォームドコンセントは、訴訟対策だけでなく、患者との信頼関係や医療安全の観点からも重要だ」と訴えた。

 田邉氏は、遺族側が医療事故調査制度のことを「死因究明制度」だと誤解している節があることも指摘。「今回の制度の目的は医療安全であり、説明責任を果たすことではない。遺族やマスコミのためでもなく、今や未来の患者のための制度だ」と強調した。

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