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J Am Coll Cardiol HF誌から
高血圧・肥満・糖尿病の予防で心不全リスク低下
生存期間は延長、心不全有病期間は短縮

2016/12/15
佐古絵理=メディカルライター

 高血圧肥満糖尿病という3つの危険因子と生涯の心不全発生リスクとの関連性を調べた疫学研究から、いずれの危険因子もない中高年では、全ての危険因子を有する中高年と比べ、心不全発症リスクが大きく低下することが示された。結果はJ Am Coll Cardiol HF誌12月1日号に掲載された。

 この疫学研究では、米国の4つのコホート研究、すなわちFramingham Heart Study、Framingham Offspring Study、Chicago Heart Association(CHA)Detection Project in Industry Study、Atherosclerosis Risk In Communities(ARIC)Studyの参加者データを統合して解析した。

 高血圧は血圧が140/90mmHg以上であるか治療中であることと定義した。肥満は肥満度指数が30kg/m2以上であること、糖尿病は空腹時血糖が126mg/dL以上であるか治療中であることと定義した。

 起点年齢を45歳または55歳として、その年齢時の高血圧、肥満、糖尿病の有無に基づき、参加者を分類した。心不全の発生リスクおよび心不全による死亡について、Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)を推定した。心不全のない生存期間および全生存期間については、Kaplan Meier解析を行った後、Irwin's restricted meanを用いて生存年数を計算した。

 45歳を起点とした場合の解析対象は1万9249人(女性は49.5%)、55歳を起点とした場合の解析対象は2万3915人(女性は53.5%)だった。

 高血圧、肥満、糖尿病のいずれも有していなかった人は、45歳では53.2%、55歳では43.7%だった。一方、これら3つの危険因子すべてを有していた人は、45歳の場合0.98%、55歳の場合2.6%だった。

 心不全の発症は、45歳を起点とした場合は51万6537人・年の追跡期間中に1677例確認され、55歳を起点とした場合は50万2252人・年の追跡期間中に2976例確認された。追跡期間の中央値は、45歳では27.1年間、55歳では20.3年間だった。

 45歳時に高血圧、肥満、糖尿病のいずれも有していなかった人は、これら3つの危険因子全てを有していた人と比べ、心不全のリスクが顕著に低かった(男性HR:0.27、95%信頼区間[95%CI]:0.16-0.44、女性HR:0.15、95%CI:0.10-0.22)。55歳を起点とした場合でも同様の傾向がみられた。

 どの危険因子も有していない45歳男性は、危険因子を全て有する45歳男性と比較して、心不全のない生存期間が平均10.6年長かった。危険因子を3つとも持たない45歳女性の場合、心不全のない生存期間は、全ての危険因子を有する45歳女性より平均14.9年長かった。

 3つの危険因子のうち、糖尿病は心不全のない生存期間との関連が最も強いと考えられた。糖尿病のない45歳の男性および女性は、同年齢の糖尿病患者と比べ、心不全のない生存期間がそれぞれ平均8.6年および10.6年長かった。

 3つの危険因子をすべて有する45歳男性の45歳以降の生存期間は平均25.8年であり、心不全の有病期間は全生存期間の6.9%を占めていた。一方、どの危険因子も持たない45歳男性の生存期間はこれより平均9.8年長く、心不全の有病期間の割合は2.7%に過ぎなかった。

 今回の解析では、45歳男性の心不全リスクには高血圧の有無による有意差が見られなかった。著者らはこれについて、降圧薬の使用により高血圧の影響が緩和された可能性があると述べている。

 著者らは、「有病期間の圧縮」、すなわち理想的な健康行動を行うことにより、全生存期間が延長するだけでなく、慢性疾患を抱えた状態での生存期間が短縮するという概念について言及。今回の結果から、高血圧、肥満、糖尿病の予防という健康行動が、心不全に関連した有病期間の圧縮と関連していることが示唆されたと述べた。そして、心不全のない生存期間を定量化すれば、心血管系の健康を増進するための有用なリスクコミュニケーションツールになる可能性があると結論している。

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