気分障害または不安障害と診断されていた妊婦を対象に、分娩5カ月前から当日までの抗うつ薬の使用と分娩後の出血の関係を分析した結果、特に分娩当日にも使用していた女性で、様々な抗うつ薬の使用と出血リスクの間に有意な関係が見られることが示された。米Harvard公衆衛生大学院のKristin Palmsten氏らが、BMJ誌電子版に2013年8月21日に報告した。
米国と複数の先進国で1990年代以降、分娩後出血が増加している。分娩後の出血は、母体死亡の主な原因の一つになっている。米国では1994年の2.3%から2006年の2.9%に増加したが、その理由は明らかではない。
これまで、セロトニンの再取り込みを阻害する抗うつ薬の使用が、消化管出血や周術期出血のリスク上昇と関係することを示した研究は複数あった。この種の薬剤が血小板のセロトニンにも作用すれば、出血リスクの上昇は起こり得ると考えられる。米国では妊婦の7~13%が抗うつ薬の投与を受けているが、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)の使用と分娩後出血の関係を調べた質の高い研究は行われていなかった。
著者らは、分娩が近づいた妊婦がSRIまたはそれ以外の抗うつ薬(non-SRI)を使用することと分娩後の出血の関係を明らかにするためにコホート研究を実施した。
全米のメディケイドのデータ(Medicaid Analytic eXtract)から、00~07年に分娩した12~55歳の女性(死産を除く)で、分娩の1カ月前~5カ月前までに気分障害または不安障害と診断されていた10万6000人を抽出して情報を得た。
分娩後の出血は、「分娩のための入院中の出血」または「分娩から3日以内の外来受診を必要とした出血」と定義した。
薬局の調剤データを利用して抗うつ薬曝露期間を調べ、以下の4つの曝露群に分類した。(1)分娩当日に使用していた「現在使用者」、(2)分娩日の1~30日前に1日以上使用していたが、分娩当日は使用しなかった「最近の使用者」、(3)分娩日の1カ月前~5カ月前までに使用歴があった「過去の使用者」、(4)分娩前5カ月間に使用がなかった「非使用者=参照群」。
抗うつ薬と出血イベントの関係は、セロトニン再取り込み阻害の程度の影響を受けると考えられるため、抗うつ薬のセロトニントランスポーター解離定数(Kd)に基づいてセロトニントランスポーターに対する親和性を評価し、SRIとnon-SRIに分類した。この方法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的セロトニン・ノルアドレナリン阻害薬(SNRI)の他に、三環系抗うつ薬であるクロミプラミン、イミプラミン、アミトリプチリンもSRIに分類された。
分析対象はSRIまたはnon-SRIのいずれかを使用していた患者とし、これらの両方を分娩前5カ月間に使用していた患者は除外した。
主要転帰評価指標は、抗うつ薬曝露時期と分娩後出血のリスクに設定。年齢、人種、多胎妊娠、凝固障害、糖尿病、分娩年、分娩後出血の危険因子、気分障害/不安障害の重症度、他の向精神薬の使用、出血リスクにかかわる他の薬剤の使用などで調整して相対リスクを求めた。
海外論文ピックアップ BMJ誌より
BMJ誌から
分娩当日までの抗うつ薬使用が出血リスク上昇と関係
分娩前に気分障害/不安障害と診断されていた10万6000人のデータを分析
2013/09/06
大西 淳子=医学ジャーナリスト
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