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記者の眼

AIもお手上げ?「複雑」な心房細動を診る方法

 2009年に34歳で夭逝したSF作家、伊藤計劃氏が2008年に刊行した代表作『ハーモニー』の舞台は、人々の健康維持を第一に優先する近未来の高度医療社会。あらゆる人間は体内の恒常性を常時監視するシステム「WatchMe」を身体にインストールしており、病気の徴候が見つかればその症状に応じた「医療分子(メディモル)」が精製されて自動的に治療されるのです。

 なお、作中でこうした健康至上主義的な社会が構築された背景となっているのが、2019年に発生した「大災禍(ザ・メイルストロム)」。米国から広まった世界規模の暴動に端を発し、発展途上国への核兵器の流出、さらには核戦争の影響で変異した未知のウイルスの蔓延により、健康への切迫した危機が人類を襲ったという設定です。経緯も規模も異なるものの、発生時期や内容に昨今のコロナ禍と相通じる部分が少なくないことに、個人的には一抹の恐ろしさを感じます。

 同作の魅力はそうした舞台設定だけではなく、この世界観の中で起こる衝撃的な事件とその真相究明で繰り広げられる息もつかせぬ展開にもあるのですが、それはさておき、全身の健康状態を完全に監視して自動的に治療するような芸当は、2020年時点の科学技術では難しいでしょう。しかしその第一歩とも言えるような、病気をウェアラブルデバイスにより検出する技術の開発は、着々と進んでいます。

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