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 平成から令和に元号が変わり、診療所の経営環境はどう変わるのでしょうか。

 厚生労働省の医療施設動態調査によれば、一般診療所の数は2019年5月末概数で10万2396施設。2012年以来ずっと10万施設台を維持しており、新規開設数は毎年数百施設に上ります。病院勤務医の中にも、開業を志す方は依然として多いでしょう。

 ただし、これから先の診療所の経営環境は決して楽観視できません。外来医療の需要が近い将来ピークを迎えるとみられるからです。

「外来医師多数区域」で開業すれば、在宅医療の提供が必須に?
 団塊世代が後期高齢者になる2025年にかけては、外来・入院ともに医療需要が増加します。しかしその後、団塊世代が80歳以上になって通院困難な高齢者が増え、若年層の人口減少が進めば、外来医療需要が減少に転じる見通しです。競合する診療所が増えれば、1カ所当たりの外来患者数は相対的に減ることになります。

 外来患者の争奪戦のライバルとなるのは、診療所ばかりではありません。ここ数年、急性期医療を手がける200床未満の中小病院の間で、地域包括ケアシステムを支える「地域包括ケア病棟」を開設し、外来医療や在宅医療を強化する動きが目立ってきました。外来や在宅の患者が急性増悪した際に病棟でスムーズに受け入れられるのがこうした病院の強みであり、患者にとっても安心感につながりますから、診療所の大きな脅威となりそうです。

 さらに、今年4月から施行された改正医療法の動向にも目を向ける必要があります。法改正に伴い、地域の外来医療機能の偏在や不足などの情報を可視化し、都道府県が対応を検討する予定です。特に留意すべきは、新たに導入される外来医師の偏在指標。二次医療圏ごとの偏在指標を比較して上位33.3%を「外来医師多数区域」とみなし、同区域で2020年4月以降に新規開業する場合、在宅医療や初期救急医療など地域に必要な医療機能を担うことを求める方針が示されています。

 こうした点を踏まえると、今後、開業を志す医師は、診療所の立地の選定、地域における競合の有無の確認、担う医療機能の検討なども含めて慎重に準備を進めた上で、患者から選ばれる診療所を目指すことが不可欠になるでしょう。

 また開業後は勤務医時代と異なり、経営者として人事・労務管理にも気を配らなければなりません。多くの医師にとって苦手な分野ですから、しっかりした対策が求められます。

 近年急増している患者トラブルやクレームへの対策も欠かせません。特に顕在化しているのがインターネット関連のトラブルです。以前は掲示板サイトへの書き込みが少なくありませんでしたが、最近、Googleなどの検索エンジンの結果に表示される口コミ欄で診療所への悪質な書き込みが目立ちます。

 このように新規開業では、診療所の開設前後に注意すべき点が少なくありません。それでも、工夫次第で患者の心を引きつけている繁盛診療所は数多くあります。「自分の診療スキルで勝負したい」という気概をもって開業を目指す医師の方々が理想の医療を実現できることを心より願っています。

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