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 先日、あるテレビ番組で「認知症を有し、妄想や暴力行為がひどくなった母を病院に入院させた結果、夜に身体拘束され、認知症がさらに悪化し身体機能も低下したため、慌てて自宅に戻した」という患者家族の声が紹介されていた。2017年5月、日本で働いていたニュージーランド人の27歳男性が精神科病院で身体拘束を受けた後、深部静脈血栓症による肺塞栓症疑いで死亡した。この件が国内外で報道された後、身体拘束に関する報道が増加しており、冒頭の番組も、そうした報道の1つだった。

 激しく暴れる認知症患者を家族だけで介護することに限界があるのは確かだろう。しかし、「認知症で暴れるので病院で看てほしい」「身体拘束は許容できない」「身体機能や認知症の悪化はさせないで」「院内転倒などケガも絶対にさせないでほしい」といった家族の要望を全て叶えるのは、現状の医療提供体制ではなかなか難しい。病院側に「そのご要望は満たせないので、家で看てください」と言われてしまえば、途方に暮れるのは家族側だ。

マンパワー不足と訴訟リスクにさらされる医療機関
 日経メディカル Onlineは、医師会員を対象に患者の身体拘束に関するウェブアンケートを2017年7月26日~8月7日に実施し、3604人から回答を得た。この中の「この1年の間に身体拘束を行ったことはありますか?」という問いに対して、1860人(51.6%)が「ある」と回答した。

 回答のあった医師を診療科ごとに分け、「ある」と回答した医師の割合を見てみると、最も身体拘束実施率が高い診療科は心臓血管外科だった。次いで呼吸器外科や救急科など、侵襲度の高い処置が多い診療科では8割以上の医師が1年以内に患者の身体拘束を実施していた。

 身体拘束を実施する状況としてはもちろん術後のせん妄なども含まれるが、どの診療科でも共通して多かったのは「認知症を有する患者」で、拘束しなければ自傷他害の恐れがあったり、治療の妨げになるケースだった。

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