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 こちらの「記者の眼」コーナーでは9度目となります河田と申します。日ごろはバイオテクノロジーの専門誌『日経バイオテク』(1981年創刊)の編集などに携わっています。

 今回は、最近取材した注目の最先端技術について紹介します。

 2016年7月22日から日本で「ポケモンGO」を楽しめるようになりました。当方も翌23日に従来型の携帯電話(ガラケー)をスマホに切り替えました。

 GPS(全地球測位システム)機能とバーチャルリアリティー(VR)技術を組み合わせたゲームに、人気のキャラクターであるポケモンを載せることにより、ポケモンGOを楽しむ人が世界で急増しています。

 GPSを用いた新技術では、小型無人機のドローンの事業化も急拡大しています。家電量販店などでも販売されるようになってきたので、ご覧になる機会はあるかと思います。当方もドローンの装置そのものは展示会などで何回か直に触ったことがあり、東北地方の復興支援やポルトガルのトマト栽培(カゴメとNECが共同)などにドローンを利用する取り組みはこれまでも記事にしてきましたが、先月の7月11日には、プロペラを回して空中に浮遊するドローンを初めて見る取材がありました。

 JR東日本の青梅線の終着駅である奥多摩駅がある東京都の奥多摩町が、7月11日にドローンの発表会を行ったのです。ドローンとディープラーニングを活用した社会インフラ適用に関する共同研究を、大学共同利用機関法人である情報・システム研究機構の国立情報学研究所(NII、ウェブサイト)が奥多摩町と開始したことについて、NII教授のブレンディンガー氏が7月11日に奥多摩町を訪問しました。

 まずは、5月24日から町長の4期目を務めている河村文夫氏、次いでブレンディンガー氏が、この共同研究の狙いについて説明しました。

 奥多摩町は、面積では東京都の10分の1を占める大きな行政区です。人口は5177人(2016年2月)で、東京都全体の人口1351万人と比べると2000分の1未満です。

現在の規制ではドローンの飛行は地上150mまで
 奥多摩町は、経済的には全国で最も恵まれている都道府県である「東京都」の自治体の1つではありますが、限界集落と呼ばれる集落があり、現在は民間ベースで必需品が届けられているけれども、これがいつまで続くか分からない。

 そこで、この町民の日常生活の維持にドローンを利用する検討を進めます。緊急の災害対策などに活用していく取り組みと合わせて、NIIと共同研究を始めたのです。

 ドローン5台を組み合わせて、広大な町の課題解決に活用していく考えです。最初の地形調査の段階では中国DGI社製のドローンを使用していますが、実際に物を運ぶ段階では、日本のエンルート製のドローンを検討します。共同研究契約は、インフォマティクスなどの最先端の研究を行うNIIと、ドローン実験の場を提供する奥多摩町、それに日本のドローン企業であるエンルートの3者の契約です。契約は単年度ですが、2年目の2017年度のうちにメドを立てたいとのことでした。

 このようなドローンの実用化には、規制緩和が欠かせないようです。現在の規制では、地上150mよりも高いところをドローンが飛行するのは許されないため、奥多摩町はドローン活用の検討を開始した2015年6月に、特区を要望しました。東京都の島しょ部も含む13町村の連名です。

破壊されてしまった世界遺産をクローン技術で複製
 次の話題は「クローン」。7月13日に千代田区の科学技術振興機構(JST)で開かれたJST理事長の濱口道成氏による記者説明会で、東京藝術大学教授の宮廻正明氏が「クローン文化財」への取り組みを話しました。

 濱口氏は、名古屋大学の医学部長や総長を経て、2015年10月にJST理事長に就任しました。東京藝大におけるクローン文化財への取り組みは、濱口氏がJSTの理事長に着任する前から中心になって推進してきた文部科学省の革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)に採択されたプログラムの1つです。

 この5月26日には、G7の伊勢志摩サミットのサイドイベント「Terrorism and Cultural Property」の会場で、東京藝大COI拠点制作の高精細複製壁画「クローン文化財」2点が展示されました(プレスリリース)。

 日本伝統の和紙の技術や、3Dプリンターの技術なども活用して、文化財のクローン作製を次々と進めています。破壊されてしまった世界遺産を、残された写真などを基に複製する取り組みも成果を挙げています。

 日ごろ取材しているバイオテクノロジーの世界では、クローンというと、スコットランドで1996年に誕生した羊のドリーをまず思い起こしますし、また、桜のソメイヨシノは全てクローンであるけれども、樹木1本1本個性があり、ゲノム配列は同一ではありません。昨年の3月には、ソメイヨシノは、東京都台東区の上野公園に現存する1本を原木として広がった可能性があるとの研究結果を千葉大学が発表して注目を浴びました。

 細胞は増殖などの過程でゲノムの塩基配列などに変異が生じます。自然に生じた変異をうまく活用して、食糧などを増産することにより、人類は発展してきました。

 ここ数年で、ゲノムを書き換える革新技術が登場しまして、狙いを定めて簡便にゲノムを編集することが可能になってきました。

 地球上で増え続けている人類の課題である食料やエネルギーの調達、それに先進国で共通の国家的課題になっている少子化と高齢化社会への対策で、ゲノム編集技術はこれから重要になってきます。

 ゲノム編集技術の話題は、日経バイオテクから配信しているメールで、少し紹介しました。

[2016-3-24]
【GreenInnovation Vol.304】育種学会と植物生理学会、内閣府SIP、ゲノム編集など「精密育種」を知ってもらう

[2015-5-22]
【機能性食品 Vol.189】「ドローン」と「ゲノム編集CRISPR」は似ているかも、機能性表示食品はゾロゾロトクホ

 ここで2カ月ほど前の話題になりますが、5月29日に日本科学未来館(東京・江東)で開催された「みらいのかぞくプロジェクト」について紹介します。100人近くが参加しました(日本科学未来館ウェブサイト)。

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