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記者の眼

病床機能再編でリハビリに劇的変化が訪れる

 「今のリハビリは、患者の求めるリハビリとはかけ離れている」──。

 こう語るのは日本慢性期医療協会会長の武久洋三氏だ。武久氏が代表を務める平成医療福祉グループの回復期リハビリテーション病棟では、在宅復帰機能を強化するため、摂食嚥下機能排泄機能の訓練に力を入れる、独自のリハビリ手法を取り入れるようになった。

 2015年5月20日の介護給付費分科会では「リハビリテーションにおける医療と介護の連携に関する調査研究事業(2014年度)」の研究結果が示されている。この研究は脳血管疾患等リハビリや運動器リハビリを実施する病院、通所リハビリ事業所、通所介護事業所、居宅介護支援事業所の各1000施設・事業所を対象に行われたもの。このうち、通所リハを継続する患者にリハビリ継続理由を尋ねたところ、「身体機能を治したい」(78.8%)、 「筋力や体力をつけたい」(75.4%)といった心身機能に関する希望だけでなく、「移動や食事、入浴や排泄などの動作ができるようになりたい」(55.9%)、「社会的活動をできるようになりたい」(42.3%)といった希望を持つ患者が高い割合で存在することが明らかになった。

 一方で、実際のリハビリで実施された内容を見ると、筋肉トレーニング(86.7%)、関節可動域訓練(74.6%)、屋内での歩行訓練(71.7%)が中心で、排泄・入浴などのADL訓練は8.2%、摂食・嚥下の訓練は2.5%にとどまっていた。

 この結果から武久氏は「おむつをして経管栄養している人がリハビリに熱心になれるはずがない。患者のニーズに応えるリハビリを行うことで、人間性の回復を目指す」と考え、摂食嚥下訓練や排泄訓練に力を入れるリハビリを同法人の回復期リハビリ病棟に取り入れた。

 平成医療福祉グループの4施設で30人の患者を対象に、保険算定のルールに縛られることなく、その患者に必要と考えられる十分量の摂食嚥下訓練を言語聴覚士が2カ月間行い、効果を検証した。介入前は63%の患者が経鼻栄養、14%が経口摂取という状況だったが、1日平均5.6単位(112分)のリハビリを行った結果、83%の患者が経口摂取できる状態にまで改善した。

 排泄訓練についても、同グループの22施設で111人を対象に、その患者に必要と考えられる十分量の排泄訓練を2カ月間行った。当初はおよそ半数の患者がおむつを使用していた状況だったが、1日平均5.1単位(102単位)のリハビリが行われた結果、介入後は69%の患者が布パンツに切り替えることができた。

 今後起こる病床機能再編は、このような「人間性の回復を目指す」リハビリを取り入れる動きに拍車を駆けそうだ。

 団塊世代が75歳以上になり、医療供給量の不足が想定される「2025年」を乗り切るため、2014年6月に可決・成立した改正医療法には「地域医療構想の策定」が盛り込まれた。地域医療構想は、病床機能報告によって全ての病院・有床診療所の医療資源を把握し、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の機能別に、2025年の医療需要や必要病床数を二次医療圏単位で決めるもの。各地域の実情に合わせて検討した地域医療構想を基に、大がかりな病床機能再編が起こる見通しとなっている。
 

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