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記者の眼

臨床推論の面白さを味わえるミステリー小説

 医師やコメディカルの皆さんへお薦めの本を紹介します。

 『ドクター・ホワイト』(角川書店)は、新聞社の出版部に勤務する主人公が、早朝の公園で出会った謎の少女の素性を解明していくミステリー小説です。なぜかこの少女は類まれなる臨床推論の能力を持っていて、主人公の知人の病院を舞台に数々の患者を救い、経営危機にある病院の立て直しもしていきます。

 著者は、樹林伸氏。私はこの名前を見て、「な……なんだってー!!」と心の中で叫び、10秒後、Amazon Kindleストアでポチっていました。

 樹林氏といえば、1990年代に『金田一少年の事件簿』や『サイコメトラーEIJI』の原作を担当したヒットメーカー。最近はワインがテーマの「神の雫」の原作もしていました。なんといっても30歳代前半男子なら、週刊少年マガジンで連載していた『MMR マガジンミステリー調査班』の隊長・キバヤシを思い出すでしょう。当時、週刊少年マガジンの編集者だった樹林氏がモデルとなり、主人公を務めるという斬新な漫画でした。ノストラダムスの大予言とか、宇宙人グレイによるキャトルミューティレーションとか、懐かしくないですか。

 話がそれました。

 この『ドクター・ホワイト』、謎の少女がまるで探偵のように診断を下していく姿が印象的です。NHKの「総合診療医ドクターG」がはやっていますが、患者の生活習慣や病歴などを把握していくことで徐々に全貌が見えてくるところなど、診断と事件の推理は共通点が多いですね。ターゲットをある程度絞ってから検査(鑑識)をオーダーするところなどもそう。「金田一」から「ワイン」に行って、この「医療×ミステリー」に参入するあたり、さすがキバヤシ隊長です。

 この本を、特に医師やコメディカルの皆さんにお薦めしたかったのは、「途中で謎が解けてしまう」という貴重な体験ができるからです。

 ストーリー中に、「有名カメラマンに枕営業をしていたグラビアアイドルが撮影中、カメラマンに突然キスして、直後に昏倒する症例」が出てくるのですが、私も2年しか在籍していない日経メディカルでの取材経験を生かし、途中で何の病気か分かりました。読み進めていくうちに思い浮かべていた病気が答えとして示されると、爽快感があります。他の症例は残念ながら分からなかったのですが、読者の皆さんなら途中で解ける人も多いでしょう。

 ストーリーとしても臨床推論の面白さだけでなく、つぶれそうな中小病院の医師たちと病院経営の実権を握ろうとする投資会社「ジャパン・メディカル・アドバイザーズ」から派遣されたエリート医師たちとの駆け引きなど、医療関係者であれば引き込まれそうな部分が豊富です。

 文体もライトノベル風、まさに『ノベライズ版・金田一少年の事件簿』テイストですので、読みやすいと思います。この1冊ではまだ伏線を回収し切っていないので、続編が出るかもしれません。謎解きが好きな方はぜひ。

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