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記者の眼

人工膵臓システム実現に向けての第一歩

 持続血糖測定(CGM)による血糖値がリアルタイムで確認できる機能を備えた、注目の新しいインスリンポンプが開発された。日本メドトロニックの「ミニメド 620Gインスリンポンプ」がそれで、リアルタイム表示機能が付いたインスリンポンプは日本初(関連記事:「血糖値がリアルタイムに確認できる日本初のインスリンポンプ」)。

 血糖自己測定(SMBG)は1日に数回測定したときの血糖値が分かるだけで、血糖の変動を推測することは極めて難しいが、CGMは5分ごとに測定するため、血糖変動をかなり正確に把握できるというメリットがある。ところがこれまで、CGMの測定データは機器に保存されているものの、外部に即時送信する機能はなく、医療従事者が後日データを取り出す必要があった。

 新型インスリンポンプでは、患者の体に装着したCGM用センサーに接続されたトランスミッター(送信機)から、ワイヤレスでリアルタイムにデータを得られる。食事や運動などによる血糖値の変化をすぐに把握できるので、予測に基づいたインスリン投与にならず、より質の高い血糖コントロールが実現できる。また、無自覚性低血糖が認知できるというメリットもある。もっとも、リアルタイムにデータを確認するだけであれば、インスリンポンプでなくても、スマートフォンやタブレットなどに表示させた方が見やすいだろう。

低血糖時に自動的にインスリン注入を停止
 日本の製品では、低血糖になった場合にアラームやバイブで知らせるのみで、インスリンの注入を止めるためには、低血糖で判断力が低下していている状況や就寝中であっても、ボタンを操作しなければならなかった。一方、海外の一部製品では、血糖値がある基準を下回るとインスリンの注入が自動的に一時停止(サスペンド)される機能が既に実装されている。

 このように、CGMで測定された血糖値に応じてインスリンの注入量を自動的にコントロールする「クローズドループ」のインスリンポンプが登場している。さらに、低血糖時だけでなく、患者自身が装着しているだけで高血糖時などにも適切にインスリン量が調節され、血糖値が常に自動的にコントロールされるようになれば、まさしく人工膵臓システムといえるだろう。今回のCGMとインスリンポンプのリアルタイム連動機能は、人工膵臓システムの第一歩というわけだ。

 実際、米国の若年性糖尿病研究財団(Juvenile Diabetes Research foundation:JDRF)は以前から、CGMとインスリンポンプをリンクさせてアルゴリズムに基づいた注入を行うシステムの開発に外部の研究者と取り組んでいる。また、日本人工臓器学会も携帯型人工膵臓や植込み型人工膵臓に言及しており、それらを用いることで「長期にわたる厳格な血糖コントロールが可能になるだろう」と指摘している。

 今のCGMは間質液のグルコース濃度を測定しているため、1日3回程度、SMBGの血糖値で補正する必要がある。完全なクローズドループのインスリンポンプとするためにはこの他にも課題はあるが、今後の技術の進歩によりそれらが解決されれば、インスリンポンプは真の人工膵臓システムとなり、糖尿病患者の予後やQOLの向上に大きく貢献するだろう。

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