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 2014年3月に実施された第99回薬剤師国家試験の合格率が60.8%にとどまり、各方面に多大な影響を及ぼしている。日経ドラッグインフォメーション6月号は「薬剤師国家試験合格率60%の衝撃」と題するレポートを掲載し、その影響を分析している。

 60.8%という数字は、薬学部4年制から6年制への移行期で合格率が低迷した2010年・2011年を除くと、薬剤師国家試験の合格率としては最低レベルだ。

 しかし、歴史を大きく遡ると、2014年は最低ではない。国会図書館で過去の薬剤師国家試験を閲覧していたところ、「薬学研究」1950年7月発行号で、同年4月に実施された第2回薬剤師国家試験の学科試験(学説)の合格率が58.7%だった、という記述を発見した。

 同号では、第2回の学説問題を全問掲載し、また京都薬科大学、神戸薬科大学、大阪大学付属薬学専門部、大阪薬科大学、名古屋市立大学薬学部などから学長・教授クラスを集めた座談会「薬剤師国家試験を語る」を掲載、試験内容や低合格率の原因、影響を分析している。

 1950年といえば、終戦から5年、サンフランシスコ講和条約もまだ締結されていない。この当時の薬剤師試験は学説と実地試験からなり、学説に合格しないと実地試験には進めなかった。なお、1949年からの65年間で薬剤師国家試験の回数が99回に達しているのは、1987年まで試験が年2回実施されていたためだ。

 ここで、当時の試験問題を見てみよう。第2回薬剤師国家試験は50問から成り、答えは選択肢から選ぶ問題が主。まず目を引くのは、数学の問題が出ていることだ。(以下、問、座談会での発言引用部は原文ママ。ただし旧字体は置き換えている。解答は1950年刊の「薬剤師国家試験の手引き」による)

第21問 直交座標(x,y)を用い、xy=kであらわされるものは、次ぎの5個のうちどれであるか。正しいものに○をつけよ

1)円
2)だ円
3)直線
4)正弦曲線
5)双曲線


 1960年まで、試験科目は試験の都度、薬事委員会が定めることになっていたが、試験範囲の中には数学が含まれていた。解答は5)。双曲線は、現在の学習指導要領では高等学校の数学IIIに入っている。

 また、固有名詞ではアルファベット表記をそのまま使用している場合が多い。表記の違いにより受験者に不公平が生じないようにしたのかもしれない。

第26問 すい臓ホルモン"Insulin"の効力は、下記の方法の内の、どれで検定されるか。正しいものに○印をつけよ

1)動物に経口的に与えて血圧の上昇率を測る 
2)動物に注射して血圧の上昇率を測る 
3)動物に注射して血圧の下降率を測る 
4)動物に注射して血糖量の増加率を測る 
5)動物に注射して血糖量の減少率を測る


 1923年、欧米での発売とほぼ同時期に日本でもブタ由来のインスリンの輸入販売は始まっていたようだが、1950年当時はまだカタカナ表記が定着していなかったもようだ。インスリンの他に"Thyroxine"や"Testosterone"などもアルファベット表記されている。正解は5)。

 調剤の問題もある。これはかなり実務に役立ちそうに見える。日経ドラッグインフォメーションの人気コンテンツである日経DIクイズのようだ。

第30問 次ぎの処方を調剤するには下法のうち、どれが正しいか。正しいものに○をつけよ

処方 ミグレニン0.5 アスピリン1.2
右寫散剤1日量、3包とし与う

1)配合禁忌であるから、調剤しない 
2)処方通りそのままをとり、混和し、3分して与う 
3)処方のとおり薬品をとり、処方者の許しを得て乳糖1.0を加え、混和し、3分して与う 
4)ミグレニン及びアスピリンを各3分し、別々に包み、両者を1包ずつ組み合わせて与う 
5)ミグレニンに乳糖1.0を加えて混和し、3包とし別にアスピリンをとり3包として与う


 ミグレニンは現在あまり使われない古い鎮痛薬。これとアスピリンをそのまま混ぜると湿って固まってしまうので、組合せ散剤とする、というのが正解で正答は4)。

 ただし、座談会では「第30問のミグレニンとアスピリンの配合禁忌はどれが正しいのですか、いろいろな説がありますね」「組合せ散剤ではないですか」「組合せにすれば6包になるから3包にするというのはまちがいではないですか」「迷わないように答えが出せるように問題の出し方を考えてもらわないと困ると思います」と批評している。
 

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