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記者の眼

医師は自らのうつ病を予防できて当たり前?

 「医師が自身のうつ病を予防できなかったことを責めるのは、あまりに酷。医師は病気になってはいけない、と言っているようなものではないか」

 パワーハラスメントがきっかけで若い勤務医が自殺した問題を取材していて、そんな疑問が湧き起こった。

 2007年、整形外科医として公立八鹿病院(兵庫県養父市)に勤務していた男性医師のA氏が、勤務開始からおよそ2カ月後に自ら命を絶った(享年34)。両親は、当時の上司であった整形外科部長と医長によるパワハラと長時間労働が原因でA氏がうつ病を発症し自殺に至ったとして、元上司2人と病院を相手取り1億7000万円の損害賠償を求める訴訟を提起。今年5月に判決が出た。鳥取地方裁判所米子支部は、原告側の訴えを認め、元上司と勤務先に対し、約8000万円の損害賠償を支払うよう命じた(関連記事:勤務医自殺訴訟でパワハラ認定、8000万円の損害賠償)。

 元上司らはパワハラはなかったと主張したが、判決は「社会通念上許容される指導または叱責の範囲を明らかに超えるものだった」とパワハラの存在を認めた。病院に加えて公務員である元上司2人にも責任があるとした判決は、原告側弁護団の岩城穰氏によれば「前例があまりなく、非常に画期的」だという。

 一方で判決は、(1)医師として疾患に関する知識を持つA氏がうつ病発症の可能性を軽減する行動をとっていなかった、(2)精神疾患が専門でない元上司らがA氏の能力、性格、業務に対する姿勢、体調の変化を正確に把握し、即座に対応するのはやや困難な状況だった──などの理由から、損害賠償額(死亡慰謝料、死亡逸失利益など)の2割を「過失相殺」して減額した。

 ここで一つの疑問が生じる。原告と被告は、どちらも同じ整形外科医。なのに、A氏は自身のうつ病を予防できなかったことを責められ、一方の元上司らは精神疾患専門医でないことを理由に、A氏がうつ病にかかっているのに気付けなかった点を許されたことになる。同じ専門外の医師なのに、こうも扱いが違うのであれば、A氏の遺族も納得いくはずがない。

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