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 去る3月15日、都内で開かれた「多摩マイライフ包括支援協議会」の設立記念シンポジウムに足を運んだ。同協議会は昨年末、「トータルケアの仕組み構築」「多世代が支え合う暮らし」の実現を目標に掲げて、地域の医療法人・介護事業所や医師会・歯科医師会、研究者、民間企業、NPO法人などが立ち上げたもの。地域の医師会・歯科医師会なども参画した組織は全国でも珍しい。

 東京都南部に位置する多摩市では、1960~70年代に開発された大規模住宅地「多摩ニュータウン」の住民の高齢化などに伴い、今後高齢者の割合が急速に高まると予測されている。そのスピードは、「5年後には国の高齢化率を追い抜く」(多摩市の担当者)ほど。こうした背景から、行政もこの取り組みに期待を寄せており、後押しする姿勢を示している。

 シンポジウムには、多摩市健康福祉部長の鈴木秀之氏、UR都市機構ウェルフェア担当部長の加藤邦彦氏、「ブリリア多摩ニュータウン」団地管理組合理事長の加藤輝雄氏が登壇。加藤輝雄氏は築40年の団地の建て替えを住民活動によって推し進め、住民同士の交流スペースの設置など新しいコミュニティーづくりにも着手する「地域のリーダー」だ。

 各氏の講演後には、会場に集まった住民からの自主報告も相次いだ。ある団地の自治会長は、団地内に住む高齢者の受診同行、東日本大震災の際の安否確認と数日間の食事提供などの活動を紹介。また、多摩市老人クラブ連合会会長は、市内にある35の老人クラブと一緒に取り組んでいる、独居の高齢者の見守り、買い物援助や草むしりといった日常生活の支援活動について報告した。

 高齢になっても、可能な限り住み慣れた地域の在宅で生活する──。この理念を実現するため、厚生労働省が推進するのが、「地域包括ケアシステム」の構築だ。在宅生活をサポートする手段として、国や自治体による支援である「公助」に加え、「自助」「共助」「互助」の組み合わせなどが提唱されている。「自助」とは自らの健康管理や介護保険外サービスの活用、「共助」とは介護保険をはじめとした社会保険制度やサービスを指す。

 「互助」とは、ボランティア活動などを指すが、現状では実現性が見通せないと指摘する向きが少なくない。地域のボランティア活動への参画が一種のステータスともなる欧米と比べると、日本ではボランティア活動がまだそれほど一般的ではない。これについては厚労省も課題と認識しており、「今後対応策を考えたい」としている。

 そんな中、多摩市の近隣住民や高齢者自らが支援者として助け合うこれらの取り組みはまさに「互助」。こうした活動を、多摩マイライフ包括支援協議会の医療・介護サービス提供者がバックアップしていけば、これまでにない新しい地域包括ケアシステムのモデルが生まれる可能性がある。

 当日のコーディネーターを務めた、同協議会理事で多摩市医師会長の田村豊氏は、「超高齢社会を迎えるに当たり、医療・介護の専門職の個別の頑張りだけでは限界がある。住民とともに考え、地域での生活を支えていく仕組みをつくらなければならない」と語った。

 地域を支える関係者が一堂に会した同協議会と、活発な住民活動がどのような化学反応をもたらすのか、注目していきたい。
 

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