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 2年ほど前、日経メディカルCadettoで行ったアンケートで、今の若手医師が博士課程で行っている研究のテーマを聞いてみたことがある。研究テーマの多くは教授・教官から与えられた基礎研究であったのは予想通り。ただ、自らの臨床経験で生じたクリニカルクエスチョンを博士課程の研究テーマとしている医師もいて、興味深く読ませてもらった。

 それらの中には「こんなシンプルなことが実は分かっていないのか」と、ある意味感動したものもあった。タイトルに挙げた「重症患者の解熱」というクエスチョンも、臨床現場におけるシンプルかつプリミティブなテーマと言えるだろう。しかし、多くの臨床研究と異なるのは、このシンプルな題材が段階を経て、学会主導の多施設ランダム化試験に発展していることだ。

 この研究テーマは現在、日本集中治療医学会が主導するFACE2試験(Fever and Antipyretic in Critically ill Evaluation:phase2 randomized controlled trial)として、多施設ランダム化試験の症例登録が進んでいる。目的は、集中治療室の重症患者について、解熱を38.0℃で始める「積極解熱」群と39.6℃で始める「発熱許容」群の比較だ。

 そもそも「解熱は行うべきなのか」というシンプルなクエスチョンが臨床研究の対象になるのか! という驚きとともに、この試験の内容を聞いたのは同学会の2年前の学術集会だった。システマティックレビューを経て、日韓の多施設観察研究(FACE試験)を実施し、その結果を基に多施設2b相ランダム化試験のエンドポイントを設定するという、臨床研究のお手本のような手順。その手順を医師主導できれいに踏んでいるところが、数年ほど製薬企業主導の臨床試験を中心に取材していた目に、新鮮に映ったとも言えるかもしれない。

 今年3月の学術集会でも、CTG(Clinical Trial Group)委員会報告としてセッションを開催。FACE2試験については、立ち上げの段階から中心となって進めてきた岡山大麻酔科蘇生科助教の江木盛時氏が試験の概要を解説し、参加施設を募った。

解熱の方針は施設・医師で様々
 「集中治療の現場における様々な課題の臨床研究を学会としてバックアップする。その先例となって内外にアピールできるものとしたい」。同学会CTG委員会委員長を務める西村匡司氏(徳島大救急集中治療医学教授)はFACE2試験への期待をこう説明してくれた。

 FACE2の前段階となるFACE試験は元々、韓国の集中治療医学会との交流を学会で担当していた西村氏がやはり担当メンバーの江木氏に、日韓で共同研究できそうなテーマのアイデアを打診したことから生まれた。そこで江木氏は、医師になった当初から持っていた、「体温が上がったら下げろ」という指示に対する疑問をテーマに挙げたという。

 江木氏はまず、重症患者の解熱の妥当性を論じた内外の文献を検索。中枢神経障害を有するICU患者への解熱の有効性は認められたものの、それ以外の患者では解熱の有効性が証明されているとはいえず、有害性を示唆するものもあった。国内のICUを対象に行った予備調査でも、「38℃なら解熱する」「38℃程度なら解熱は考えない」と、解熱に対するポリシーは施設や医師によって様々。そこで、FACE試験を日韓の集中治療医学会のバックアップで立ち上げ、25施設、患者1426人、6万3441ポイントの体温、4940の解熱処置についてのデータを得た。

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