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 近年の肺癌非小細胞肺癌)治療のトピックスの1つに維持療法があります。昨年は、多くの維持療法に関する取材を重ねました。

 従来、進行非小細胞肺癌の化学療法は、プラチナ系薬剤(シスプラチン〔商品名ランダほか〕やカルボプラチン〔商品名パラプラチンほか〕)と細胞傷害性抗癌剤(+分子標的薬)を併用した“プラチナダブレット”を4~6コース投与した後、病勢の進行が認められるまでは経過観察し(watch and wait)、進行が認められたら二次治療を開始するという療法が主流でした。

 しかし、近年注目されている維持療法(maintenance therapy)は、まず導入療法としてプラチナダブレットを4コース行った後、プラチナ系薬剤と併用した細胞傷害性抗癌剤(+分子標的薬)のみを投与し続けていこうという治療です。導入療法を行っても病勢が進行してしまった場合は二次治療に移行しますが、そうでなければ導入療法で用いた薬剤を継続して投与し続けます。

 2006年には、カルボプラチン+パクリタキセル(商品名タキソールほか)に分子標的薬であるベバシズマブ(商品名アバスチン)を併用した導入療法後、ベバシズマブによる維持療法を行った場合に全生存期間が延長すること、また2012年には、シスプラチン+ペメトレキセド(商品名アリムタ)による導入療法後、ペメトレキセドによる維持療法を行った場合に全生存期間が延長することが臨床試験で示され、話題となりました。

 こうした維持療法が注目される背景には、毒性の少ない新しい抗癌剤が登場したことで、その継続投与が可能になったことがあります。

 加えて、病勢が進行していないとはいえ、何もしないでいるよりは何かしてほしい、という患者側の希望も大きいようです。実際、各地のがんセンターや大学病院で肺癌治療に当たっているドクターからは、患者は「最も強力な治療を受けたい」と希望して来院するという話を聞きます。がんセンターなどの専門施設には、特にそうした希望を持つ患者が多いようです。最新の知見が瞬時に世界中に知れ渡る現在は、医師が患者から積極的に治療法を「提案」される時代でもあります。

 一方、私事で恐縮ですが、最近、近親者で抗癌剤治療を受けた者がいまして、2週間おきに外来化学療法センターに通いました。文句も言わずに通っているなあ、と思っていましたが、あるとき、血液検査で基準値未満となった項目があり、化学療法が延期となった日がありました。ドクターにそのことを告げられたときの、少し「ほっ」とした顔が今でも忘れられません。新しい抗癌剤を使い、最も予後が改善すると期待されるレジメンを用いた、最新のガイドラインにのっとった治療を受けたのですが、やはり辛いこともあったようです。

 日々学会などを取材していると、効果が高くて毒性が少ない新しい抗癌剤や、副作用が少なくより高い効果が得られるレジメンの開発が精力的に進められていることを感じます。日経メディカル オンラインのテーマサイト「癌Experts」が、こうした新しい知見が広く普及していくための一助になることを願っています。

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