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 日経メディカル オンラインで私が編集を担当している連載に、ブログ「尾藤誠司の『ヒポクラテスによろしく』」がある。8月末に公開した記事「いまだに白衣の着方が分かりません」において、医師が白衣を着る理由について尾藤先生による考察をお書きいただいたところ、これが非常に多くの方に読まれることとなった(記事はこちら)。

 記事の中で挙がった「白衣を着る理由」を簡単にまとめると、汚れや感染症から自分をガードするため、仕事環境で曝露する特殊な薬品や細菌等を、他の場所や日常に持ち込まないようにするためという一般的な理由のほか、医療サービス利用者に対して信頼を得るための「責任感を示す」アイコンとして着るのかもしれない、というものがある。詳しくは記事をお読みいただきたい。

 実はこの記事の校正作業をしている間に、私は青森県の八戸市民病院救命救急センターへ出張取材に出かけていた。その際、奇しくも「医師が白衣を着る理由」についてもう1つ考えられるのではないか、という場面に遭遇した。出張の目的は、日経メディカルCadettoと白衣メーカー「クラシコ」のコラボにより製作した新しいコンセプトのスクラブを、現場の医師に試着していただき、忌憚なきご意見を伺うことだった(コラボスクラブについてはこちら)。

 取材は順調に進み、出動待機中のドクターヘリの前で写真撮影をしながらインタビューをしていた時だった。同センターの河野裕美先生に「このコラボスクラブ、いかがですか?」という質問をしたところ、「これでナースに間違えられなくなりました」という回答が返ってきた。私は最初、その言葉の意味がよく理解できなかった。

 「今までのスクラブは男女兼用デザインで、色もよくある何種類かの中から選ぶだけ。すると、院内でナースとかぶることも多く、よく間違えられていました。それがこのコラボスクラブはチャコールグレーという、滅多にない色なので、ナースに間違えられなくなりました」(河野先生)。つまり河野先生の話から考えるに、白衣やスクラブなどを着る目的には、「きちんと『医師らしく』見られたい」ということもあるのではないかと思い至ったのだ。

 振り返ると、私にも同様の目的で白衣を着ていた経験がある。私が通っていた某大学バイオ系学科では、3年次から研究室に配属されるが、実験室では白衣の着用義務があった。だが私は、実験が終わっても白衣を着たまま研究室を出て、「俺は白衣を着る学科ですが何か?」という顔つきで大学内を歩いていた(当然だが食堂では脱いでいた)。その根底には、白衣を着ない他学部の人から羨ましがられたい、そして「研究者の卵らしく」見られたい、という思いがあった。

 私の過去の実体験などたいした裏付けにならないとは思うが、医師が白衣を着る理由として「『らしく』見られたい」というのもあり得るのではないかと思うのだが、いかがだろうか。ちなみに、現在はこうして記者となり、毎日スーツを着ているが、別にこれは「記者職」のユニフォームではないし、着ることで「記者らしく」見られることもないはずだ。しかし、私は30代前半でヒラ社員なのに、「吉村さん、編集長とか部長クラスみたいな風格ですね」と取材相手から言われることが1度や2度ではない。「らしく」見られすぎなのかもしれない…。

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