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服薬指導のリスクマネジメント
冷えたタリビッド耳科用液を点耳し目まいを起こした患者

2009/01/28
澤田 康文=東京大学大学院教授 情報学環/薬学系研究科 医薬品情報学講座

1 処方の具体的内容は?

25歳男性。中耳炎。

<処方1>


タリビッド耳科用液 5mL 1本
    1回6滴 左耳 1日2回点耳する
      点耳後は約10分間の耳浴



2 何が起こりましたか?

・寒冷地に住んでいる患者が、冬場、自宅の机の引き出しの中に入れておいたタリビッド耳科用液(一般名:オフロキサシン)をそのまま点耳したところ、目まいを起こしてふらついた。

3 どのような過程で起こりましたか?

・患者には今回、中耳炎のため耳鼻科から初めてタリビッド耳科用液が処方された。診察を受けた日の夜は非常に冷え込んだ。次の日の朝、机の引き出しから本剤を取り出して点耳したところ、目まいを起こした。薬剤師からは、本剤は室温保存であり、冷蔵庫に入れる必要はないとだけ言われていた。それを聞いた患者は、この薬剤は温度の影響を受けないので、冷蔵庫に入れる必要はないのだと解釈し、本剤を机の引き出しに入れておいた。また、薬剤師からは点耳液の温度と、副作用としての目まいとの関係については一切説明がなかった。

4 どのような最悪の事態が予想されますか?

・目まいから転倒し打ち所が悪く大けが。

5 なぜ起こったのでしょうか?

・タリビッド耳科用液の適用上の注意として、使用する際の薬液の温度が低いと、目まいを起こす恐れがあるので、使用時には、できるだけ体温に近い状態で使用することとなっている。しかし本事例において、それに関する注意は一切なされなかった。

・本剤に限らず、冷水を外耳道に注入すると目まいを起こす危険性があることは一般的に知られている。この因は、注入部位の急激な温度変化によってその部位でのリンパ液の流れが変化するためだと考えられている。したがって、点耳剤を冷蔵庫から出した場合には、室温に戻してから使用する必要がある。しかし、冬場の寒冷地においては、たとえ机の引き出しなどの室温保存と考える場所に保管しておいても温度が低くなることが少なくない。本事例では、患者は温度が低いことが問題であることの説明を受けておらず、不適正使用となってしまった。

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