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服薬指導のリスクマネジメント
ベイスン錠を「便秘にいい」と友人に渡した患者

2008/11/26
澤田 康文=東京大学大学院教授 情報学環/薬学系研究科 医薬品情報学講座

1 処方の具体的内容は?

68歳の女性。糖尿病。

<処方 1>


ベイスン錠0.2  3錠
   1日3回 毎食直前服用 14日分



2 何が起こりましたか?

・患者Aはベイスン錠(一般名:ボグリボース)を、同じ薬局で投薬を受けている友人B(高血圧で降圧剤を処方されている)に分け与え、Bがそれを服用していることが明らかとなった。


3 どのような過程で起こりましたか?

・友人Bは患者Aに対し、「最近、お腹が張って便秘気味でおならも出なくて苦しいの」と話した。Aは「私が今飲んでいるベイスンという薬は便も軟らかくなって、おならもよく出るし、あなたの症状にちょうどいいわ」と話した。そこでBはAから薬をもらい1日分(合計3錠)服用した。Bの調子が少し良くなったので、Aは余分にベイスンをもらえないかと薬剤師に頼んだ。これを聞いて驚いた薬剤師はBに特に変わった症状がないか確認するとともに、B のかかりつけ医に報告した。医師から「特に問題なければ、処方された薬をきちんと服用するように、またベイスンの服用は中止させ、今後も一切譲り受けないよう指導してもらいたい」とのコメントを得た。Bにはベイスンを服用しないよう注意した。


4 どのような最悪の事態が予想されますか?

・Bが低血糖昏睡で死亡、Aは罪の意識から自殺。


5 なぜ起こったのでしょうか?

・患者Aが友人Bに言ったのは、ベイスンの副作用である腹部膨満、放屁・腸内ガスの増加、下痢・軟便のことと思われる。便秘の患者に対してはこの副作用が有用に見えるかもしれないが、一般に糖尿病でない患者が経口血糖降下剤を使用するのは、低血糖症を引き起こす可能性が高く、極めて危険な行為である。

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