DI Onlineのロゴ画像

下肢静脈瘤に効く漢方(1)
下肢静脈瘤の考え方と漢方処方

2018/01/10

 下肢静脈瘤とは、足(下肢)の裏側やふくらはぎなどの血管が膨らんでこぶのように浮き出る疾患です。みみず腫れのように太く盛り上がったり、細い血管が蜘蛛の巣のように見えたりします。

 足の静脈には、心臓に戻るべき血液が重力によって逆に足先の方へ下がっていく(逆流する)のを防ぐための弁が内側に付いています。この弁が正常に働かなくなると、足の静脈内に血液がたまり、静脈が膨らみ、下肢静脈瘤が生じます。

 主な症状としては、見た目の異常だけでなく、足のむくみ、重だるさが生じます。また血流が滞って鬱血するため、痛みや痒みも生じます。こむら返りなど、足がつりやすくなる人も少なくありません。湿疹や色素沈着が生じる場合もあります。

 下肢静脈瘤は、男性よりも筋力が弱い女性に多く、妊娠を契機に発症する人もいます。美容師、理容師、調理師、看護師、客室乗務員、教師など、立ち仕事を長時間する人に多くみられます。運動不足や肥満、加齢によっても生じます。

 下肢静脈瘤によくみられる証には、以下のようなものがあります。

 この疾患のベースにあるのは、「血瘀(けつお)」証です。血流が鬱滞しやすい体質です。静脈瘤は血流の停滞ですので、まさにこの血瘀の状態です。血瘀証は、精神的ストレスや、冷え、体内の水液の停滞、生理機能の低下などによって生じます。疾患や体調不良が慢性化、長期化してこの証になる場合もあります。妊娠、出産によっても生じます。血行を促進する漢方薬を用いて下肢静脈瘤を治療します。

 血瘀に加えて、足のしびれや痛みを伴うようなら、「血虚血瘀(けっきょけつお)」証です。血虚は、(けつ)が不足している証です。血は、血液や、血液が運ぶ栄養を意味します。血瘀と相まって足が血虚状態となり、しびれや痛みが生じます。漢方薬で血流を改善し、血を補って下肢静脈瘤を治します。

 下半身の冷えやむくみを伴うようなら、「寒湿(かんしつ)」証です。湿気が多くて寒い環境に長期間滞在することなどによって発生した寒湿邪が足に停滞し、下肢静脈瘤を生じます。寒湿は、体内に滞留する寒邪と湿邪が結合した病邪です。長時間の立ち仕事によって生じることも少なくありません。体を温めて湿気を取り除く漢方薬を使い、下肢静脈瘤を治療します。

 加齢とともに生じた下肢静脈瘤なら、最も考えられるのは「腎陽虚(じんようきょ)」証です。腎の陽気が不足している体質です。腎は五臓の1つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。腎陽虚の陽は陽気を指します。陽気とは気のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて気のことを陽気と呼びます。加齢だけでなく、生活の不摂生、過労、慢性疾患による体力低下などによっても人体の機能が衰え、冷えが生じてこの証になります。腎陽を補う漢方薬で下肢静脈瘤を治します。

■症例1

「3カ月前に出産したばかりです。痛くも痒くもないので最初は気が付きませんでしたが、下肢静脈瘤ができていました。膝の裏がみみず腫れのように膨らんでいます。見た目が気になって短いスカートがはけません」

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

この記事を読んでいる人におすすめ