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若年性更年期障害に効く漢方(1)
若年性更年期障害の考え方と漢方処方

2015/07/07

 このところ、20代、30代の若い女性にも、生理不順や無月経、のぼせ、手足の冷え、多汗、肩凝り、頭痛などの更年期症状を訴える人が増えています。若年性更年期障害です。

 若年性更年期障害の主な原因は、ストレス、無理なダイエット、食生活の乱れ、生活の不摂生、疲労の蓄積や過労、過激なスポーツなどです。このような状態が続くと、人体に必要な気血(きけつ)が消耗し、あるいはその流れが悪くなり、卵巣機能が低下し、女性ホルモンのバランスが乱れ、更年期と同じような症状が表れ、若年性更年期障害になります。

 若年性更年期障害を放置すると、将来、不妊症、早発閉経、骨量の減少などに結び付きます。早めに体質を改善し、安定した生理が自然に来るようにしておく方がいいでしょう。

 漢方では、気血の量や流れを調えることにより、若年性更年期障害を治療します。「血(けつ)」は人体を流れる構成成分の一つで、血液や栄養のことです。血の量が減ると生理不順や無月経となり、若年性更年期障害に陥ります。また、血の流れを推動する「気」の失調も、若年性更年期障害に関係してきます。

 若年性更年期障害の証には、以下のようなものがあります。

 一つ目は「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。身体の諸機能を調節(疏泄)する臓腑である五臓の肝の機能(肝気)の流れが滞っている体質です。ストレスや緊張が持続すると、この証になります。肝気の流れの悪化の影響がホルモンバランスの失調に及び、若年性更年期障害が生じます。漢方薬で肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、若年性更年期障害を治していきます。

 二つ目は「血虚(けっきょ)」証です。人体に必要な血液や栄養が不足している体質です。偏食など無神経な食生活、胃腸機能の低下、出血、慢性疾患などにより、この証になります。血が不足しているため、生理周期が遅れ、若年性更年期障害になります。漢方薬で血を補い、ホルモンバランスを調えていきます。

 三つ目は「脾気虚(ひききょ)」証です。消化吸収や代謝をつかさどる五臓の脾の機能(脾気)が弱く、生命エネルギーを意味する「気」が不足している体質です。過労、生活の不摂生、慢性疾患などにより気を消耗すると、この証になります。気の不足により、卵巣が十分血で潤わされず、若年性更年期障害になります。漢方薬で脾気を強めて若年性更年期障害の治療を進めます。

 四つ目は「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。腎は五臓の一つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、ならびに水液や骨をつかさどります。その腎の陰液が不足している体質が腎陰虚です。陰液とは、人体の構成成分のうち、血・津液・精を指します。過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、加齢などにより精が減ると、女性ホルモンの量が減り、若年性更年期障害になります。腎の精気など腎陰を補う漢方薬で若年性更年期障害を治します。

 五つ目は「腎陽虚(じんようきょ)」証です。腎の陰液ではなく、陽気が不足している体質です。陽気とは気のことで、人体の構成成分を陰陽に分けて考える場合、陰液と対比させて陽気と呼びます。生活の不摂生、過労、慢性疾患による体力低下、加齢などにより人体の機能が衰えて冷えが生じるとこの証になります。腎陽が虚弱になると、卵巣の機能が衰え、若年性更年期障害になります。腎陽を補う漢方薬で若年性更年期障害を治します。

■症例1

「去年の暮れに仕事の部署が変わって以来、生理周期が乱れています。ここ3カ月ほど生理が来ないので病院に行ってみたところ、若年性更年期障害の疑いがあると言われました」

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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