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うつ病に効く漢方(1)
うつ病の考え方と漢方処方

2014/07/14

 うつ病は、心身の活力やエネルギーが低下している状態です。気分障害に伴う気の流れの停滞が深く関わっています。五臓の肝、心、脾の機能を整えることにより、うつ病の改善を図ります。

 気分の落ち込みや、無気力、憂うつ感は、誰にでもある感情の動きです。軽い抑うつ状態、あるいは一時的な症状なら心配はいらないでしょうが、これが何週間も続き、心身の健康や社会生活に影響が及ぶようであれば、対策を打ったほうがいいでしょう。

 人間誰しも過度のストレスがある状況に継続的に置かれると、心身共に衰弱し、自分を肯定する気持ちも弱くなります。そうなると自分の存在意義や生きる目標なども分からなくなり、自分に自信が持てなくなり、何事に対しても無気力になっていきます。

 これは、心身の活力やエネルギーが低下している状態です。うつ病の場合、ここに気分障害に伴う気の流れの停滞が深く関わっているのが特徴です。

 うつ病の場合、二つの角度から治療を進めます。一つは、強いストレスや刺激に直面する患者に対し、ストレスに対する抵抗性の高めていくことです。ストレスに対する許容量を大きくしていくことにより、強い刺激によって心が折れる危険を和らげます。これは、強い病邪が病気の原因となっているケースなので、実証のうつ病に対する対処法です。

 もう一つの角度は、心身が弱っている患者に対し、心身の活力を充実させることです。心身が弱っていると、通常であれば特に気にならない程度のストレスにも敏感に反応し、落ち込んだり抑うつ状態になったりします。そこで、弱った心身に活力とエネルギーを与えることにより、うつ状態から回復させたり、刺激に対していい意味で鈍感にしたりします。病邪に対する自分自身の底力(正気[せいき])の衰退が原因ですので、虚証のうつ病に対する対処法と言えます。

 要(かなめ)となっているのは五臓の肝(かん)です。肝は、身体の諸機能を調節(疏泄[そせつ])する臓腑です。自律神経系や情緒の安定、気血の流れと深い関係があります。この肝の機能が失調したり、弱ったりすると、疏泄機能がスムーズに働かなくなり、抑うつ状態となります。心配や不安、怒り、思い悩みなどの感情の起伏が限度を超えると気の流れが滞り、それが気血や臓腑に影響を及ぼし、うつ病となるのです。ことが思いどおりに運ばない、思いが遂げられない、ということが引き金となる場合もあります。

 肝の失調以外には、人間の意識や思惟など、高次の精神活動(神志[しんし])をつかさどる五臓の心(しん)や、消化吸収をして気血を生成する脾の機能失調とも深い関係にあります。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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