
丁香 (ちょうこう)
フトモモ科のチョウジEugenia caryophyllata の花蕾。
芳香性健胃薬の一種で、胃が冷えておこる腹痛、吐き気、下痢などに用いられます。一般に1.5~5gを煎じて服用します。
肩こりは、大変よくみられる症候です。肩から首、後頭部、あるいは肩甲骨や背中にかけて、こり感、こわばり、だるさ、重苦しさ、不快感、痛みなどを感じます。
これらの症候が出るのは、首から肩、背中にかけて広がる筋肉です。主な筋肉は僧帽筋です。僧帽筋は、頭蓋骨の後頭部から下に広がり、肩甲骨や鎖骨にまで及ぶ筋肉です。ある宗派のカトリック修道僧のフード(帽子)と似ているので僧帽筋と呼ばれます。
これらの筋肉の役割の一つは、頭部を支持することです。これらの筋肉がないと、頭ががくんと前に倒れたままの状態になります。
そこで僧帽筋などの出番となるわけですが、人間の頭部はなかなか重く、体重の約10%あります。体重50kgの人なら5kg、60kgの人なら6kgの重さです。それはちょうどスイカ1個と同じ重さです。スイカを上から片手でわしづかみにし、バスケットボール選手のようにぐっと持ち上げるだけの力が僧帽筋に求められます。
頭部の重心がちょうど脊椎の真上にあれば、僧帽筋に、さほど負担はかかりません。しかし斜め下を向いた姿勢でいると、僧帽筋の緊張が強まります。背中を丸めた姿勢や、あごを突き出した姿勢でも、僧帽筋への負担が増えます。
社会人になってから肩こりがひどくなったという人が多いのは、このためです。デスクワークをする人などは、ほぼ1日中、パソコン画面や机の上をながめて仕事をしているわけですから、僧帽筋などは、1日中スイカを落とさないように緊張し続けていることになります。事務職以外の仕事や、手作業、家事などでも同じことがいえます。
この僧帽筋などの緊張が長く持続し慢性化すると、筋肉が硬くなり、血液の循環が悪くなります。そうすると酸素や栄養が筋肉全体に行き渡らず、疲労がたまり、慢性的な肩こりが生じます。さらに緊張を強いられる筋肉の範囲が次第に広がると、こりが重くなり、鉄板が入っているような感じになり、首が回らなくなり、痛くて眠れなくなることもあります。頭痛や吐き気をともなう場合もあります。
西洋医学的には、湿布や内服の消炎鎮痛薬、筋弛緩薬、デパスなどの抗不安薬などが使われます。
漢方では、主に気血の流れを良くすることにより、肩こりを改善させています。同じようにデスクワークで僧帽筋に負担がかかる姿勢でいても、気血の流れが良くなれば、肩こり体質が改善され、こりや痛みが和らぎます。
肩こりの証(しょう)には、以下のようなものがあります。
一つ目は「気滞(きたい)」証です。気の流れがよくない体質で、そのために筋肉が緊張し、肩こりが生じます。気の流れを伸びやかにする漢方薬を使い、肩こり体質を改善していきます。
二つ目は「血瘀(けつお)」証です。血流が鬱滞しやすい体質で、肩のまわりでうっ血が生じ、肩こりが起こっています。血行を促進し、うっ血を取り除く漢方薬が有効です。
三つ目は「血虚」証です。血液や栄養を意味する血(けつ)が不足しているため、肩においても栄養失調の状態になっており、肩の筋肉に十分な栄養や潤いが行き渡らず、肩こりが慢性化しています。漢方薬で血を補い、肩こりを緩和します。
四つ目は「陰虚」証です。血虚が慢性化し、あるいは慢性疾患の影響などで陰液が不足している証です。十分な陰液がないために内熱が生じて、肩こりが起こります。陰液を補う漢方薬で、肩こり体質を改善します。
ほかには、疲れがたまって生じる「気虚」証の肩こりもあります。肩はさほど硬くなっておらず、強くもむと、かえって肩こりが悪化します。