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不妊症に効く漢方(1)
不妊症の考え方と卵子を元気にするための漢方処方

2011/04/28

幸福薬局の待合スペースには、漢方薬をケースに入れて飾っています。
(写真:室川イサオ)

 今回は漢方の得意分野のひとつ、不妊症の漢方治療についてお話します。

 「なかなか子供を授からない」という悩みは昔からあるものでしょうが、最近では晩婚化や出産年齢の高齢化が進み、不妊に悩む夫婦は増えています。とくに女性が妊娠する確率は、年齢が上がるにつれ低下していきます。体外受精の成功率をみても、35歳より若いと約50パーセントありますが、35歳を境に年齢とともにどんどん下がります。

 さて、不妊症になぜ漢方薬が効果的なのでしょうか。それは、「生命」に対する漢方の考え方が、妊娠というメカニズムに合っているからです。

 不妊の原因は、卵子の状態がよくない、排卵がうまくいかない、卵管が通りにくい、受精卵が子宮内膜に着床しにくい、などが西洋医学的に考えられています。もちろん、女性ばかりが悪いのではなく、精子の状態がよくない場合もあります。これらのうち最も多いのが、排卵がうまくいかない場合――つまり排卵障害です。ホルモンバランスの失調や、多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症などの病気が背景にあります。

 また子宮筋腫や子宮内膜症があると、受精卵が子宮内膜に着床しにくくなり、妊娠の可能性が下がります。淋菌などの感染や炎症があると、卵管が狭くなり、あるいは閉塞し、これも不妊の原因になります。

 検査をしても異常が見つからないという原因不明の不妊もあります。不妊症全体の約3分の1が現代医学では原因不明の不妊です。冷え症やストレス、肥満、過度の飲酒や喫煙などが関係していると思われます。

 冒頭でも説明した通り、加齢も不妊の大きな原因のひとつです。卵子も子宮も年齢とともに質が低下します。アメリカの統計ですが、妊娠しやすさは35歳以降で急激に低下する、とされています。

 卵子は女性の年齢とともに古くなります。精子が常に新しく作り出されるのとは対照的に、卵子は女性が出生前から未成熟卵子として卵巣内にあり、女性とともに年齢を重ねています。

 最近の傾向として、女性のからだは女性ホルモンに支配されているかのような言い方をされることが多いように思います。女性ホルモンさえコントロールしていれば、妊娠も更年期も簡単にうまくいく、という考えです。しかし、この傾向、少し気になります。

 たしかに排卵や生理、更年期などが女性ホルモンと関係が深いのは事実です。しかし、わたしたちはホルモンの操り人形ではありません。

 わたしたち人間は、ホルモンに操られて生きているのではなく、逆に、わたしたちが生きていくために必要だから、ホルモンが存在しているはずです。ホルモンという目に見える「物質」が注目されがちですが、その背景にある「生命力」を高めることこそ基本的で大事なことだと思います。

 漢方は、生命力を高める医療です。とくに「腎」や「気血」といった人体のとらえ方は、「妊娠しやすさ」と密接に関係しています。具体的にみていきましょう。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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