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かぜに効く漢方-こじらせた場合編-(1)
「衛気」の強化には黄耆の入った処方を

2010/11/19

服用タイミングごとに小分けしていきます。
(写真:室川イサオ)

 これまで2回にわたって、かぜの引き始めの、寒気が強いときや、熱が出るときの漢方治療についてお話しました。今回は、そういう時期にかぜを根治することができずに長引かせてしまい、かぜをこじらせたときに使う漢方についてお話します。

 かぜが長引く場合、その人の免疫力が低下しています。かぜを引き起こすウイルス感染などを、自分の免疫力で退治しきれないために、かぜがいつまでも治りません。病気には原因があり、症状が現れると、かぜに効く漢方-引き始め編-(1)でお話しました。原因から解決していこうとするのが漢方の得意分野です。かぜをこじらせた場合も、かぜの一因である免疫力の低下を改善する原因療法の立場で考えていきます。

 漢方では「風邪(ふうじゃ)は六淫(ろくいん)の首(しゅ)と為す」といい、風邪(ふうじゃ)は諸病のきっかけとなるので長引かせないように早く治すことが大事だと説いています。「かぜは百病の長」ともいいます。この六淫とは病邪の一分類で、自然界の気候変化に似た六気(風・寒・暑・湿・燥・火または熱の六つ)が必要以上に勢力を増して、病気を引き起こす状況になったとき、六淫(風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪または熱邪の六つ)になります。六気は健康に欠かせないものですが、強すぎるとかえって病気の原因になるということです。風邪はこれら六つの病邪の中で主要なものに位置付けられます。かぜは、長引かせないことが重要です。

 ポイントは、免疫力の強化です。漢方薬で免疫力を高めて、ウイルスなどの感染症を悪化させず、撃退していきましょう。

 漢方には、「気」という概念があります。体内を流れる精微物質のひとつで、臓腑や経絡といった組織や器官のなかで生理活動を進める基礎となるものです。元気・やる気の「気」と同じですから、これが不足するとからだが弱り、病気になります。逆に気が十分だと、病気になりにくく、また病気になったとしても早く治ります。

 気にはいくつかの分類があり、とくに人体への病気の侵入を防ぐ免疫力に相当する気を「衛気(えき)」といいます。かぜのように外界からの病邪の侵入から人体を防御するには、この衛気の存在が重要になります。

 病気になるかどうかは、病気の原因となる病邪と、体内にある抵抗力との攻防にかかっています。この場合の体内の抵抗力・免疫力のことを「正気(せいき)」といいます。正気は「気」だけの問題でなく、別のからだの構成成分である「血(けつ)」や「津液(しんえき)」の力も必要になってきます。総合的に丈夫なからだを作るためには、それら全体をバランスよく豊かにする必要がありますが、かぜをこじらせているという当面の問題に対しては、まずは気とくに衛気の充実が欠かせません。

では、実際の症例を見てみましょう。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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