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リスクを評価し、注意レベルにメリハリをつけよう!

2011/11/21

東日本大震災で被害を受けた解体前の漁船。まるで涙を流しているように見えました。(青森県八戸市の岸壁、2011年8月撮影)

 エラーをしても、自分も他人もほとんどダメージ(心と身体の健康被害)がないことがあります。一方で、エラーをした本人にはダメージがなくても、他人にはダメージとなることや、その逆もあります。

 ポイントとなるのは、エラーに起因したダメージの大きさです。そして、ダメージの大きさを予測するには、「リスク度評価」を行うことが大切です。

 例えば、消化性潰瘍治療薬(商品名アルサルミン)と抗癌薬(アルケラン)を調剤時に取り違えた場合、結果的に患者に投与される薬剤が「アルサルミン」か「アルケラン」かで、患者の健康に与えるダメージや、調剤した薬剤師の心理面のダメージは大きく異なります。

 投与されたのが「アルサルミン」であれば、患者に健康被害はまず生じないし、調剤した薬剤師も「あ、良かった」と思えます。「アルケラン」が投与されたのであれば、そういうわけにはいきません。

 誤って投与されたときのダメージが大きい薬剤は、「ハイリスク薬」と呼ばれるものです。特に、(1)血糖を下げる薬剤(インスリン、経口糖尿病薬)、(2)免疫機能を抑制する薬剤(抗癌薬、免疫抑制薬)、(3)心機能に影響を及ぼす薬剤(強心薬、坑不整脈薬、高濃度カリウム)、(4)血液凝固を抑制する薬剤、そして、発売後1年以内の新薬に注意する必要があります。
 
 患者側の要因も、誤投与時のダメージに大きな影響を与えます。多くの薬剤は、肝代謝を受け、腎臓から尿に溶けて排泄されるか胆管を経由して糞に混じって排泄されるので、肝臓と腎臓の機能は誤投与時のダメージの大きさを左右します。また、合併症や患者の理解度も、誤投与時のダメージに影響を与えます。

著者プロフィール

古川裕之(医療安全システムデザイナー)ふるかわ ひろゆき氏◎雪国(福井県大野市)の生まれ育ちなのに、性格はなぜかラテン系。1975年金沢大学薬学部卒業後、同大医学部附属病院、臨床試験管理センターを経て、2010年より山口大学医学部附属病院薬剤部長。18年に退職し、現在はフリーランスの「医療安全システムデザイナー」として活躍中。趣味は、写真撮影とブラジル音楽のバンド。薬学博士。

連載の紹介

古川裕之の「STOP!メディケーションエラー」
調剤する人は調剤エラーをする。調剤しない人は調剤エラーをしない。仕事をする限り、エラーから逃れることはできませんが、エラー事例から学ぶことで、重大なエラーを避けることはできます。「メディケーションエラー」防止に向けた10年以上の取り組みを通して学んだことを、分かりやすい具体例を示しながら紹介します。
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