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ケース10 12剤併用!それでも問題がなさそうな75歳男性
PPIの漫然投与、継続すべきか?中止すべきか?

2016/08/03
青島 周一

 今回の症例は75歳男性、田中良七さんです。5年ほど前から、腰部脊柱管狭窄症のため歩行困難となりました。日常生活はほぼ自立しているものの長距離歩行は難しく、同居している息子が車で通院を送迎しています。10年前に狭心症と診断され、当時は胸痛発作がたまにあって硝酸薬を頓用していました。また、同じ時期に生活環境に大きな変化があり、胃潰瘍も発症しましたが、その後の治療経過は順調で、現在では胸痛発作もなく胃潰瘍も治癒しています。

CASE#10 75歳男性、田中良七さん(仮名)

既往歴
65歳:狭心症、胃潰瘍

現病歴
60歳:高血圧症
70歳:腰部脊柱管狭窄症


検査データ
血圧160/100mmHg
心拍数90回/分

処方内容
(1)
エカード配合錠HD       1回1錠(1日1錠)
カルデナリン錠2mg      1回1錠(1日1錠)
アダラートCR錠20mg       1回1錠(1日1錠)
バイアスピリン錠100mg     1回1錠(1日1錠)
   1日1回 朝食後 28日分
(2)
ニトロールRカプセル20mg      1回1カプセル(1日2カプセル)
   1日2回 朝夕食後 28日分
(3)
ソロン細粒20%     1回0.5g(1日1.5g)
オパルモン錠5μg     1回1錠(1日3錠)
アスパラカリウム錠300mg  1回1錠(1日3錠)
   1日3回 朝昼夕食後 28日分
(4)
オメプラール錠10mg     1回1錠(1日1錠)
メバロチン錠10     1回1錠(1日1錠)
   1日1回 夕食後 28日分
(5)
カリーユニ点眼液0.005%   2本
   1回2滴 1日3回 両眼  
(6)
ロキソニン錠60mg     1回1錠
   疼痛時 空腹時避けて1日2回まで 10回分

 また、田中さんは、自分の処方や健康問題に対して以下のように話しています。

 薬に関して困っていることは特にないよ。ただなんというか、薬のおかげで生きているんだよなぁ、と思うよ。これまでに色々病気をしてきたからね。そのたびにこの薬で生き延びることができたんだ。薬を飲み忘れることはしょっちゅうなんだけど、あの先生には長年見てもらっているし、出してもらった薬は有り難くいただいていくんだ。足の痛みはそれほどでもないけど、でも長く歩くのはなかなか難しいなぁ。しびれちまうんだ。

 処方内容を見ると、明らかにポリファーマシーと言えそうですが、心血管疾患二次予防に対して低用量アスピリンの投与や、疼痛時にロキソニン(一般名ロキソプロフェンナトリウム水和物)を頓用していることから、PPI(プロトンポンプ阻害薬)の投与は、むしろ必要性すら感じてしまいます。また、ロキソニンは頓用であり漫然投与ではなく、必要最低限の処方という印象も受けます。降圧薬の併用についても、賛否はあるかもしれませんが、80歳を超えるような超高齢者においても、降圧療法は一定のベネフィットが示されています(PMID:18378519)

薬物治療、ここが気になる!
・明らかなポリファーマシーだが、明確な問題点がなさそう……。
・強いて言えば、オメプラゾールの漫然投与が問題か。しかし、NSAIDsやアスピリンを服用中しており、PPIはむしろ必要ではないか。
・ロキソニンの投与が気になるが、頓用にするなど漫然使用とならないような配慮がみられる。
・降圧薬が3剤(成分としては4剤)併用されているが、血圧も高く問題ないように思える。

 田中さんは狭心症の既往があり、プラバスタチンやバイアスピリンの投与には一定の効果があると言えそうです。二次予防に関して、ランダム化比較試験5研究のメタ分析によれば、プラバスタチンと低用量アスピリンの併用は、アスピリン単独に比べて一定のベネフィットがあることが示されています(図1)。

著者プロフィール

青島周一(病院勤務薬剤師、「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)
あおしま しゅういち氏 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て、12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBMスタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録をブログ「地域医療の見え方」などに書き留めている。

連載の紹介

青島周一の「これで解決!ポリファーマシー」
近年、医療現場では多剤併用(ポリファーマシー)が問題となっています。本連載ではポリファーマシーの具体的な症例を提示しながら、薬学的・医学的な問題点を整理するプロセスや、医療従事者と患者が抱いている薬物療法へのイメージのギャップをどう埋めるかについて考えていきます。論文の読み方は、「症例から学ぶ薬剤師のためのEBM」を参照してください。

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