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第23回日本疫学会学術総会
DMAT隊員は自らPTSDの兆候に気づくことができる

2013/02/12
三和 護

国立病院機構災害医療センターの西大輔氏(現;国立精神・神経医療研究センター)

 災害派遣医療チームDMAT)の隊員は、自ら心的外傷後ストレス障害(PTSD)の兆候に気づき、対処行動がとれる可能性が示された。東日本大震災の被災地に派遣されたDMAT隊員を対象にしたストレスケア研究の成果のひとつで、国立病院機構災害医療センターの西大輔氏(現;国立精神・神経医療研究センター)らが、第23回日本疫学会学術総会(1月24~26日、開催地:大阪府吹田市)で報告した。

 被災者だけでなくDMAT隊員も、PTSDを発症する危険性が高くなることが知られている。例えば、東日本大震災の被災地に派遣された隊員からは、「人が亡くなる夢や自分が死にそうになる夢を見るようになった」や「横になると天井が揺れているように感じる」、「震災に関連した映像を見ると涙が出る」や「頭痛と耳鳴りがするようになった」などといった声が発せられているという。そこで演者らは、医療救援者のPTSDの予測因子を明らかにし、その対処方法を探るため検討を行った。

 対象は、東日本大震災の被災地に派遣されたDMAT隊員1816人。2011年4月2日から22日までの間に初回調査を、2011年7月11日から8月4日までの間に追跡調査を行った。初回調査には254人が参加し、そのうち68.1%にあたる173人が追跡調査に参加した。

 初回調査では、包括的評価法であるPDI(Peritrumatic Distress Inventory)にて精神的苦痛を評価した。同時に、年齢や性別、職種などの背景情報をはじめ、派遣期間や派遣中のけがの有無、派遣中に遺体に接した経験の有無、震災関連のテレビの視聴時間など、海外の先行研究でPTSDと関連があると考えられる要因についても把握した。

 追跡調査では、Impact of Event Scale-Revised(IES-R)により、PTSD症状を評価した。

 観察研究の参加者(173人)の背景は、年齢が38.8±7.6歳、女性が43.4%で、職業は医師が20.2%、看護師が46.2%、その他が33.5%だった。派遣期間は3.7日(中央値。範囲:1-12)で、「派遣前のストレスあり」との回答が30.6%、「遺体を扱った」が8.1%、「放射線の心配があった」が7.5%、震災関連のテレビ視聴が1-4時間/日が68.8%などだった。初回調査のPDIは13.2±7.5だった。

 重回帰分析の結果、PDIの得点が高いことと震災関連のテレビの平均視聴時間が1日4時間以上であったことが、追跡調査時点でのPTSDの予測因子であった(それぞれP<0.01、P<0.04)。また、PDIの項目別にみると、「感情的になった自分を恥じた」「感情的に取り乱しそうになった」がPTSD症状を強く予測していたことも明らかになった。この2項目が強い予測因子であった点について演者らは、専門職であるための反応と推測されると指摘。「救援活動後にこのような反応を示す場合は注意が必要かもしれない」と考察した。

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