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拡張型心筋症の25%はタイチン遺伝子の異常による
スプライシング因子RBM20は心不全の新たな分子創薬標的に

2012/04/12
古川 哲史=東京医科歯科大学

 心筋症は、肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)と拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)に分類される。原因遺伝子の同定は、HCMに比べてDCMで大きく遅れていた。今年、タイチンと呼ばれるサルコメアタンパク質が拡張型心筋症の原因として大きな割合を占めることが下記の2報の論文で明らかとなった。

【論文1】
拡張型心筋症を引き起こすタイチンの切断
Truncations of titin causing dilated cardiomyopathy(Herman DS,et al.N.Engl.J.Med.2012;366:619-628)

【論文2】
遺伝性心筋症の原因遺伝子RBM20はタイチンのスプライシングを制御
RBM20, a gene for hereditary cardiomyopathy, regulates titin splicing(Guo W, et al.Nat. Med.2012;18:in press)


タイチンとは?

 「タイチン」という名前はなじみのない方も多いと思う。タイチンは、横紋筋特異的に発現する生体内で最も大きなタンパク質である。図1からも分かるように、アクチンやミオシンは1つのZ盤から隣のZ盤のサルコメア間でギャップがあるが、タイチンは1つのサルコメアを完全にカバーする唯一の分子である。

 心筋細胞の収縮が、アクチン・ミオシンの相互作用により行われることは周知のことと思うが、心筋細胞の弛緩がどのように行われるかはあまり知られていない。タイチンは、心筋細胞の弛緩の重要因子の1つであり、静止張力(passive tension)や心室充満(ventricular filling)に関与する。

 これには、タイチンに存在しバネのような働きをする弾性領域(elastic region)が不可欠である(図1)。弾性領域にはIgリピートが豊富に存在し、これが心筋収縮の時にバネのように縮まり、アクチンとミオシンの相互作用がなくなると縮まったバネが伸びるように心筋細胞の弛緩をもたらす。また、タイチンは「分子定規(molecular ruler)」というニックネームを持ち、拡張期のZ盤からZ盤までのサルコメアの長さ、すなわち心筋細胞の長径を規定する。

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