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糖尿病学の進歩2011
進行した糖尿病では緩徐な血糖管理が肝要
ACCORD、ADVANCE、VADTからの知見を日常臨床に活かす

2011/03/29
高橋 浩=メディカルライター

東京医大の小田原雅人氏

 近年、糖尿病治療では厳格な血糖コントロールの重要性が強調されている。ただし進行した症例では、特に血糖の下げ方に気をつけなければならないようだ。

 第45回糖尿病学の進歩(2月18~19日、開催地:福岡市)で東京医大糖尿病・代謝・内分泌内科の小田原雅人氏は、厳格な血糖コントロールによる心血管イベント抑制効果を検討した欧米3試験の結果を分析、「進行した糖尿病で血糖低下が困難な場合は、重篤な低血糖を来さないよう緩徐な血糖管理を心がけ、低血糖が起こった場合には即座に治療の見直しを図ることが重要だ」と注意を促した。

 厳格な血糖コントロールは心血管イベントを抑制するか――。欧米で行われた3つの大規模臨床試験であるACCORDADVANCEVADTの主要な結果が発表されたのは、2008年の米国糖尿病学会。

 いずれも糖尿病罹病期間10年前後の進行した2型糖尿病患者を対象とした試験だったが、どの試験も強化療法による有意な心血管イベント抑制効果を証明することはできなかった。ACCORD、VADTではむしろ総死亡の増加が見られ、有意な増加となったACCORDは強化療法群の追跡中止に追い込まれた。

 こうしたデータが報告された当時、血糖低下治療自体を懸念する声も上がった。しかし、その後に行われた各試験の詳細な分析結果から、厳格な血糖コントロールはやはり重要であるが、血糖の下げ方には注意が必要であることが分かってきた。

 例えばACCORDの強化療法群の死亡率は、HbA1c値の上昇に伴って高くなっていた。また強化療法群のうち、少なくとも血糖がきちんとコントロールされていた症例では、HbA1c値が低いほど心筋梗塞の発症リスクは低下していた。

 上記3試験に、UKPDS、PROactiveを加えた5試験のメタ解析では、血糖厳格管理により非致死的心筋梗塞の発症リスクが17%、冠動脈疾患の発症リスクが15%、いずれも有意に低下していた。

 そのほかの2つのメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心筋梗塞が抑制されるデータが得られている。さらに、Finnish studyでは、HbA1c 8%(NGSP値、以下同様)以上の群における心血管死は、6%未満群の13倍多かった。わが国のKumamoto studyでも、血糖が高いほど心血管死が増えることが認められている。

 このようにHbA1c値と心血管イベントのリスクは正相関するため、血糖を厳格にコントロールする必要性が示唆されるわけだが、そのコントロールの仕方には注意が必要なようだ。小田原氏は「罹病期間が長く、動脈硬化が進行した、HbA1cが高めの糖尿病患者に対しては、ゆっくりとした血糖降下を行い重篤な低血糖を防ぐ必要がある。血糖を急激に低下させるメリットはない」と強調した。
 

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