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新ガイドライン情報
米学会、糖尿病者のアスピリンによる1次予防勧告改定
JPADなど最近2試験の結果を受けて推奨対象を前回より限定

2010/06/15
小塩 尚代=メディカルライター

 米国糖尿病学会(ADA)、米国心臓協会(AHA)、米国心臓学会(ACC)は合同で、糖尿病患者における心血管疾患CVD1次予防のためのアスピリン投与に関する勧告を改定した。新しい勧告はCirculation誌オンライン版のほか、J Am Coll Cardiol誌オンライン版、Diabetes Care誌6月号にも掲載された。

 ADAとAHAによる前回(2007年)の勧告では、糖尿病で心血管リスクが高い患者、すなわち40歳を超えているか、あるいは糖尿病以外の危険因子(CVDの家族歴、高血圧、喫煙、脂質異常症、アルブミン尿)を有する患者に対し、CVD1次予防としてアスピリン(75~162mg/日)の投与を推奨していた。しかしこの推奨は少数の古い試験に基づいており、それらの試験に含まれていた糖尿病患者の例数も少なかった。

 最近実施された、糖尿病患者のみを対象とする2つのランダム化比較試験(POPADADとJPAD)はいずれも、CVDの複合1次エンドポイントに対するアスピリンの有意な効果を認めなかった。そこで上記3学会は、これらの新たなエビデンスを含めたメタ解析を実施し、それに基づいて以下の勧告を行った。

・糖尿病の成人患者で、血管疾患の既往がなく、CVDリスクが高く(CVDイベントの10年リスクが10%を超える)、出血リスク(消化管出血または消化性潰瘍の既往、あるいはNSAIDsやワルファリンのような出血リスクを高める薬剤の併用に基づく)が高くない対象者には、低用量(75~162mg/日)アスピリンの予防的使用が適切である。この推奨の対象となる、糖尿病でCVDリスクの高い成人患者には、50歳を超える男性および60歳を超える女性で、主要な危険因子(喫煙、高血圧、脂質異常症、若年発症のCVDの家族歴、アルブミン尿)を1つ以上保有する患者の大部分が含まれる(米国心臓学会財団[ACCF]/AHAのクラスIIa、エビデンスレベル:B、ADAのエビデンスレベル:C)。

・糖尿病の成人患者で、CVDリスクが低い(50歳未満の男性および60歳未満の女性で、糖尿病以外にCVDの主要な危険因子を保有していない、あるいはCVDの10年リスクが5%未満)対象者には、CVDの予防を目的にアスピリンを推奨しない。これは出血による有害作用が利益を相殺する可能性があるためである(ACCF/AHAのクラスIII、エビデンスレベル:C、ADAのエビデンスレベル:C)。

・糖尿病患者でCVDリスクが中等度(若年患者で危険因子を1つ以上保有、または高齢患者で危険因子なし、あるいはCVDの10年リスクが5~10%)の対象者には、今後さらなる研究結果が得られるまでの間は、低用量アスピリン(75~162mg/日)の予防的使用を考慮し得る(ACCF/AHAのクラスIIb、エビデンスレベル:C、ADAのエビデンスレベル:E)。

 上記の推奨に関連して、糖尿病患者のCVD 10年リスクを予測する以下のツールを紹介している。

UKPDS Risk Engine
ARIC CHD Risk Calculator
American Diabetes Association Risk Assessment Tool, Diabetes PHD
 

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