日経メディカルのロゴ画像

日本成人病(生活習慣病)学会2009
高齢者糖尿病の治療では脳血管障害予防を重視
厳格な血糖管理による低血糖リスクに十分な配慮を

2009/01/20
軸丸 靖子=医療ライター

 患者数の急増が問題となっている糖尿病。中でも60歳以上の高齢糖尿病患者数は、1997年の365万人(全糖尿病患者数の53%、厚労省調査)から2007年の598万人(同67%)へと、増加が著しい。しかも高齢者糖尿病では、糖尿病網膜症や動脈硬化、脳梗塞といった糖尿病を原因とする合併症に老化が加わり、認知症や日常生活動作の機能低下が加わってくる。そのため成人一般よりも、治療に難渋することが多い。

 この高齢者糖尿病の臨床において、優先すべきは血糖の管理か、それとも生活障害の直接の原因となる合併症の管理なのか。

 東京都老人医療センター院長の井藤英喜氏は、第43回日本成人病(生活習慣病)学会(1月10~11日、東京)のMeet the Expert「高齢者糖尿病の治療」の中で、「高齢者では糖尿病合併症の頻度が高い上、それに老化が加わって要介護状態に陥る人が多い。QOLの低下がさらに合併症を悪化させ、やがて死亡に至るという悪循環も起こりやすい。臨床ではこの悪循環を断つために、合併症、特に脳血管障害の予防をいかに行うかが大事」と述べ、血圧や脂質など脳血管障害のリスク管理をより重視すべきとの見解を示した。

 井藤氏らが、東京都老人総合研究所が開発したスケールを用いて検討したところ、高齢者糖尿病で外出や買い物などの生活機能障害が顕著になるのは80歳からで、網膜症や脳血管障害といった糖尿病合併症の数が増えるほどADL(日常生活動作)が低下することが分かった。QOLとの関連については「PGCモラール・スケール」を用いた検討から、ADLの低下がQOL低下のリスクになっていることが明らかになった。

 なお「PGCモラールスケール」とは主観的QOLの評価法の1つで、自分の老いを肯定的にとらえ、気持ちが安定していて、孤立感にさいなまれることなく満足した状態にあることを「QOLが高い」とみなす。

 このように高齢者糖尿病の治療戦略では、ADL低下予防や認知機能の低下予防が重要となる。では、予防に影響を与える因子は何か。井藤氏らがJ-EDIT試験の登録時データを分析した結果では、認知機能低下の有意なリスク要因になっているのは、(1)高齢、(2)脳血管障害、(3)うつ病、(4)低アルブミン血症――の4つだった。

 「低アルブミン血症とは栄養状態が悪いということ。糖尿病は過栄養状態が原因と考えられがちだが、高齢者糖尿病には低栄養がかなり含まれていることに注意が必要だ」と井藤氏は指摘する。

 

この記事を読んでいる人におすすめ