日経メディカルのロゴ画像

Am Heart J誌、Crit Care誌、J Card Fail誌から
利尿薬抵抗性心不全に高張食塩水が効く
常識に逆行した治療が奏効する理由は

2014/05/02

 水分[1]と塩分[2]の制限は、世界中で日々実践されている心不全治療の基本である。しかし最近、急性非代償性心不全(ADHF)患者に対して水分と塩分の積極的制限を行っても体重も臨床的うっ血スコアも変化せず、口渇感だけが有意に悪化するとの報告があった[3]

 もともと心不全に対する水分と塩分の制限には明確なエビデンスがなかったのだが、これらの制限の臨床的利益に疑問符が付いたのだった(JAMA Intern Med誌から●急性非代償性心不全患者への厳格な水分・塩分制限に利益なし、日経メディカル Online、2013/6/4)。最近の研究では、塩分制限が心不全に対し有害である可能性も示唆されている[4-7]

 また、利尿薬は心不全治療に必須な薬剤ではあるが、特にループ利尿薬の過剰な投与による予後の悪化が知られている。これがworsening of renal functionである。しかし腎うっ血の解除を介して腎保護に働くことから、適度な利尿薬の使用は推奨されている[8]

 心不全に対する利尿療法が長期にわたる場合、腎血流量低下と相まって神経体液性因子が活性化され、尿細管の機能的・構造的変化を来たし、さらなる腎血流低下を引き起こして利尿薬の反応性が低下してしまう、いわゆる利尿薬抵抗性の病態を発症することがある。

 このような背景の下、イタリア・パルマ大学のPaterna氏らは2000年頃より、難治性心不全におけるうっ血の解除にはループ利尿薬の大量投与よりも高張食塩水と利尿薬の組み合わせの方が有益であると繰り返し報告してきた[9-11]。同グループによれば、尿量の増加、血行動態および臨床所見の改善、入院期間の短縮、死亡率の低下といった点で効果が認められるという。

 さらに最近、ADHFにおける利尿薬抵抗性の病態に対し高張食塩水を投与するランダム化試験(RCT)の結果が、相次いで発表された。この勢いだと今後、利尿薬抵抗性心不全に対しては高張食塩水+利尿薬が定着しそうな予感がある。読者諸兄と共に、この新しいコンセプトを共有しておきたい。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

この記事を読んでいる人におすすめ