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N Engl J Med誌Editorialから
日本の「失われた10年」に例えられたnesiritide
急性心不全の死亡率を減らすことができる治療とは

2011/08/23

 わが国では発売されていないが、2001年に急性心不全治療に対して米食品医薬品局(FDA)の承認を受けた組換え型B型(脳性)ナトリウム利尿ペプチドnesiritide」は、米国ではガイドラインにも明示された急性心不全に対する標準治療薬だった[1]。しかし、腎機能悪化や急性期死亡増加の懸念が表明され、より多数例を対象にしたnesiritideの薬効と安全性に関する試験が長らく待たれていた。

 そして今回、7000例以上を対象としたASCEND-HF試験が行われ、その解析結果が明らかになった。米国デューク大学Clinical Research InstituteのChristopher M. O'Conner氏を第1著者としてN Engl J Med 誌(2011年7月7日号)に掲載された論文によれば、nesiritideは急性期の呼吸困難感を若干改善しただけで、心不全入院や死亡率を改善するに至らなかった[2]。

ASCEND-HF試験の概要

 ASCEND-HF試験の対象は、発症から24時間以内に入院し、安静時呼吸困難、呼吸数20/分以上、ラ音を伴った急性非代償性心不全(ADHF)の患者中、肺うっ血・BNP 400pg/mL以上・NT-proBNP 1000pg/mL以上・肺動脈楔入圧20mmHg以上・左室駆出率(EF)40%未満のいずれかを満たした症例である。低血圧や肺疾患の合併、急性冠症候群などは除外された。

 ランダム化プラセボ対照盲検試験だが、標準治療(利尿薬・モルヒネ・血管拡張薬など)に上乗せとして、nesiritideまたはプラセボを投与するデザインで行われた。nesiritideは主治医裁量に基づく2μg/kgのボーラス投与の後、0.01μg/kg/分の静注を1日以上7日間まで実施した。

 7141例が登録され、平均年齢は67歳、男性が65%、高血圧は72%、虚血性心疾患は60%、EF 40%未満は80%だった。割り付け前の治療として、95%にループ利尿薬、60%にACE阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、58%にβ遮断薬、15%に血管拡張薬が投与されており、静注強心薬の使用は4%程度だった。

著者プロフィール

駒村 和雄(国際医療福祉大学熱海病院)こまむらかずお氏。1956年生まれ。東京大学経済学部・大阪大学医学部卒。大阪警察病院、ハーバード大学留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所室長。2008年、兵庫医療大学教授。2009年、武田薬品中央総括産業医。2016年、神戸学院大学教授。2018年、国際医療福祉大学熱海病院 病院教授、兵庫医科大学非常勤講師および横浜市立大学客員教授。

連載の紹介

駒村和雄の「健康寿命で行こう」
2009年にNMO循環器プレミアムのコラムとしてスタートした「論説・総説を読む」が、バージョンアップしました。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏。同氏が現在かかわっている医療系教育研究や高齢者医療の現場から、今、わが国の第一線の医療現場で問題となっている話題を幅広く取り上げ、Evidence Basedで論じます。

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