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No.26
電気的除細動後の血栓塞栓症予防における抗凝固療法の意義
心房細動1万6274例での検討

2015/03/03
安喰恒輔=JR東京総合病院循環器内科

 心房細動の除細動は血栓塞栓症発症のリスクを伴います。血栓の発生機序としては左房、特に左心耳内の血栓が、除細動時の心房壁運動の変化によって遊離することが考えられていますが、それに加え除細動後に生じるatrial stunningも血栓形成に関与すると考えられています。これを考慮すれば、除細動前のみならず除細動後にも抗凝固療法が重要なのですが、この点については意外と徹底されていないようです。今回は除細動前後の抗凝固療法の有無が血栓塞栓症の発生頻度に及ぼす影響を検討した論文を紹介します。

論文
Thromboembolic risk in 16274 atrial fibrillation patients undergoing direct current cardioversion with and without oral anticoagulant therapy.
Europace 2015; 1: 18-23

 2000年初めから2008年末までの期間に、デンマーク国内で心房細動に対する初回の電気的除細動を施行した1万6274人を対象とし、血栓塞栓症に起因する入院あるいは死亡の発生率を抗凝固療法の有無別に検討した。

【結果】
 除細動を施行した1万6441例中、生存退院した1万6274例(99%)を平均331.8±96.8日間観察した。除細動前に抗凝固療法を施行されていたのは1万1190例(68.8%)、施行されていなかったのは5084例(31.2%)で、CHADS2スコアはそれぞれ1.1および0.9、CHA2DS2-VAScスコアはそれぞれ2.0および1.9であったが、非施行群ではスコア0の症例が多かった。除細動前に抗凝固療法を行っていなかった群で、除細動30日後と360日後に抗凝固療法を行っていたのは、それぞれ27.9%、46.7%であった。

 360例(2.2%)で血栓塞栓症を発症した。301例(1.8%)は虚血性脳梗塞、一過性脳虚血発作または全身性動脈性塞栓症で、59例(0.4%)は原因を特定できない脳梗塞であった。観察期間中に648例(4.0%)が死亡したが、うち23例(0.1%)が血栓塞栓症によるものであった。

 除細動後抗凝固療法施行群、非施行群とも、血栓塞栓症の発生率は除細動後30日間が最も高く、それぞれ4.00%/年および10.33%/年で、非施行群で2.25倍(95%信頼区間:1.43-3.53)高かった(図1)。除細動前後とも抗凝固療法を施行していなかった群では血栓塞栓症のリスクが最も高く、ハザード比は除細動前後とも抗凝固療法を施行していた群の2.47倍であった(図2)。除細動後360日間の血栓塞栓症の発生率は抗凝固療法施行群で1.84%/年、非施行群で3.18%/年であり、非施行群で1.87倍高かった(図1)。

 年齢、血栓塞栓症の既往、心房細動による再入院、が血栓塞栓症の有意な危険因子となった。さらにCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアが高くなるほど血栓塞栓症のリスクは高くなったが、どのサブグループでも抗凝固療法によって血栓塞栓症のリスクが低下した。なお、アスピリンには血栓塞栓症の予防効果は見られなかった。

著者プロフィール

●井川修(日本医大多摩永山病院内科・循環器内科臨床教授)●尾野恭一(秋田大生理学教授)●古川哲史(東京医科歯科大難治疾患研究所教授)●村川裕二(帝京大付属溝の口病院第4内科教授)●渡邉英一(藤田保健衛生大内科学講師)[五十音順]

連載の紹介

What’s New in Electrocardiology by JSE
不整脈学や心電図学の主要雑誌の中から、その道の第一人者が「なるほど」とうなった新着論文をピックアップ、新しい知見のポイントを分かりやすく解説します。

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