心不全のない心血管ハイリスクの患者に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の投与は、心血管イベントリスクを軽減することが、欧州で行われたメタ解析で確認された。論文は、11月27日付のJ Am Coll Cardiol誌で公開された。
HOPE(Heart Outcomes Prevention Evaluation)試験以降、心血管リスクの高い非心不全患者に対して心血管イベントリスク軽減目的でACE-Iを投与することが推奨されてきた。HOPE試験の結果はPROGRESS(Perondopril pROtection aGainst REccurent Stroke)試験やEUROPA(EURopean trial On reduction of cardiac events with Perindopril in stable coronary Artery disease)試験でも確認されたが、ACE-Iとプラセボを比較した他の試験においては有効性が確認されていない。一方、ARBについては、非心不全症例を対象とした研究結果は一定しておらず、効果は明らかでなかった。
本研究は、心血管リスクの高い非心不全患者におけるACE-IまたはARBの投与が、心血管死亡、心筋梗塞(MI)、脳梗塞、総死亡、新規発症心不全、新規発症糖尿病の複合エンドポイントに与える影響について検討する目的で行われた。
MEDLINE、Cochrane Database、ISI Web of Science、SCOPUSを用いて2012年6月までのデータを検索した。検索語は、angiotensin receptor blocker、antagonist of angiotensin II receptor I、ARB、angiotensin-converting enzyme、ACE、randomly、random、randomized controlled trial、clinical trialとした。二重盲検のランダム化された臨床試験で、収縮期・拡張期の心不全がなく、臨床イベント(総死亡と心血管死亡、MI、脳卒中、新規発症心不全、新規発症糖尿病)が報告されている研究を解析対象の候補とした。対象の選択は2人の研究者が独立して行い、意見の相違が生じた場合には話し合いを行った。
当初検索された2万5661件の研究のうち43件についてさらなる評価を行った結果、26件の研究の結果を含む25本の論文が今回の解析対象となった。うち13件の研究がACE-Iとプラセボ、13件の研究がARBとプラセボの比較を行っていた。
対象となった研究に参加した患者10万8212人中、ACE-Iに関する研究の対象が5万3791人、ARBに関する研究の対象が5万4421人だった。経過観察期間は2~6.5年(3.68±1.11年)、全体の平均年齢は58±11歳で、35%が女性だった。ACE-Iに関する研究とARBに関する研究の対象の平均年齢はそれぞれ58.3±8.3歳と57.7±13.1歳(P=NS)、女性の割合は26%と44%(P<0.05)、観察期間は3.66±0.90年と3.69±1.32年(P=NS)だった。
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