常染色体優性アルツハイマー病(家族性アルツハイマー病)患者の認知機能を評価し、脳アミロイド沈着、脳代謝、脳脊髄液(CSF)中のアルツハイマー病生化学マーカーを測定して、予想発症年齢との関連を調べた研究で、これらの変化は認知症発症の20年以上前から始まることが示唆された。結果は7月12日、N Engl J Med誌オンライン版に掲載された。
アルツハイマー病は数十年かけて発症するという仮説が立てられている。常染色体優性アルツハイマー病は、アルツハイマー病全体に占める割合は約1%程度だが、散発性アルツハイマー病と重複する部分があることが示唆されている。
そこで著者らは、常染色体優性アルツハイマー病患者の各種指標を予想発症年齢の関数として評価し、アルツハイマー病発症の原因となる突然変異のキャリアと非キャリアを比較した。
対象は、2009年1月26日から11年4月28日までにDominantly Inherited Alzheimer Network(DIAN)研究に登録した、常染色体優性アルツハイマー病の突然変異を有する家系の128人。DIANのベースライン時に測定した包括的臨床評価、認知機能評価、画像評価、生化学的評価の数値を解析に使用した。
臨床認知症評価法-ボックス合計(Clinical Dementia Rating - Sum of Boxes;CDR-SOB)を用いて認知状態の変化を評価した(CDR-SOB=0:正常、CDR-SOB=18:最大限の認知機能障害)。また、ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて総合認知機能を評価した(スコア0:重度の認知機能障害、スコア30:機能障害なし)。
MRIにより海馬の容積を測定した。ピッツバーグ化合物Bおよびフルオロデオキシグルコースを用いた陽電子放射断層撮影により、楔前部のアミロイドβ(Aβ)沈着およびグルコース代謝を評価した。また、脳脊髄液(CSF)を採取してAβ42濃度、総タウ濃度を測定した。
半構造化面接を行い親の発症年齢を判定し、これを患者の予想発症年齢とした。予想発症年齢から測定時の年齢を引いたものを、予想発症年齢からの推定年数とした。線形混合モデルを用い、予想発症年齢からの推定年数の関数としてデータをモデル化し、アルツハイマー病の突然変異キャリア(88人)と非キャリア(40人)のデータを比較した。
親の平均発症年齢は45.7±6.8歳だった。DIANでは親の発症年齢が子の発症年齢と相関していた(ピアソン相関係数:0.56、P<0.001)。
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