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Circulation誌から
ダビガトランは費用対効果に優れているか
INR管理が不良なハイリスク例に対する高用量のみワルファリンに勝る

2011/06/15
難波 寛子=医師

 心房細動AF)患者に対する抗血栓療法において、ダビガトランワルファリンと効果が同等でより安全で使いやすい薬剤として期待されているが、ワルファリンや抗血小板薬に比べてどの程度費用対効果が優れているか、その詳細は不明だった。

 Circulation誌6月7日号に掲載された、RE-LY(Randomised Evaluation of Long Term Anticoagulation Therapy)研究などに基づく解析から、抗血栓治療薬の費用対効果は脳卒中リスクなどの条件によって異なることが分かった。ダビガトランが優れていたのは、出血または脳卒中のリスクが高く、ワルファリンによるコントロールが不良な症例に高用量を投与した場合だった。

 今回の解析では、(1)ダビガトラン110mg1日2回(以下、110mg×2回/日)投与、(2)ダビガトラン150mg1日2回(以下、150mg×2回/日)投与、(3)ワルファリン投与、(4)アスピリンクロピドグレルの抗血小板薬2剤併用投与、(5)アスピリン単独投与、(6)抗血栓療法なし──の6つの治療戦略について、質調整生存とコストを比較した。

 解析で用いたbase-caseモデルは、脳卒中リスクが中等度で抗凝固療法の禁忌ではない70歳のAF症例を仮想コホートとした。個々の治療法およびアウトカムを比較する決断分析には、Markovモデルを用いた。

 薬剤の有効性はintent-to-treat方式を採用した臨床試験を用いて計算した。健康状態を分類し、分類の変化によりアウトカムをモデル化した。毎月、健康状態の分類によりコストと質調整生存年QALYs)を決定した。

 アウトカムは虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、頭蓋内出血(出血性脳卒中、硬膜下出血、クモ膜下出血)、頭蓋内以外の大小出血、心筋梗塞(MI)、上腹部痛/不快感、死亡とした。有害事象が発生した患者は、再発のリスクがより高い健康状態に分類した。

 それぞれのアウトカムにかかる費用は、予測される期間にわたって適用した。薬剤の内服中断率は臨床試験に基づいた。全ての治療法について、質調整生存とコストを最高20年間計算した。年齢、AFの有無、抗血栓療法によりモデル内の死亡率を調整した。

 患者の年齢に伴い死亡率は上昇するが、脳卒中既往のない症例では虚血性脳卒中の発生は一定していた。出血の発生率は臨床試験やAF患者集団の観察データから決定した。

 虚血性脳卒中は1~4(致死性、重症の神経学的後遺症、軽症の神経学的後遺症、後遺症なし)のカテゴリーに分類した。同様に出血についても、致死性、大出血(全ての頭蓋内出血を含む)、小出血に分類した。

 ダビガトラン群とワルファリン群のMI発生率はRE-LY研究より見積もった。抗血小板療法中のMIのリスク比は他の研究に基づいた。質調整生存は、予測されたQOLに有害事象発生の可能性を乗じて計算した。

 コストは、外来と入院および処方薬をカバーするが休業補償などの間接的費用は含まない保険会社またはメディケアの決定を反映した。薬剤の年間コストは、ワルファリンが545ドル(米ドル、以下同じ)、クロピドグレルが1847ドル、ダビガドランが3240ドルと算出した。脳卒中と出血のリスク予測にはCHADS2およびHEMORR2HAGESを用いた。
 

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