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Ann Intern Med誌から
強化インスリン療法は入院患者の予後を改善せず
米内科学会はICUでの目標血糖値として140~200mg/dLを推奨

2011/03/02
難波 寛子=医師

 入院患者に対する強化インスリン療法intensive insulin therapyIIT)については初期の研究において有効性が報告されていたが、その後、多くの研究では効果が確認されていない。IITの効果と弊害を明らかにする目的で行われたシステマティック・レビューから、IITは入院患者の予後を改善しないことが明らかになった。この結果はAnn Intern Med誌2月15日号に掲載された。

 本研究は、次の2つの疑問に結論を出すために行われた。すなわち、(1)IITは通常の血糖管理と比較して、SICU(外科系ICU)・MICU(内科系ICU)・一般病棟に入院した患者や、周術期・急性心筋梗塞(MI)・脳卒中で入院中の患者の予後を改善するか、(2)これらの患者群において厳格血糖管理の弊害は何か──である。

 MEDLINEとCochrane Database of Systematic Reviewsを用いて、1950~2010年1月の期間を対象に論文の検索を行った。また、専門家の意見や適切な参照文献リストも用いた。未発表の研究についてはClinicalTrials.govより情報を得た。

 3人の研究者が抄録を再検討し、英語の論文で、入院患者のIITに関する生データを含むものを抽出した。用量を固定したインスリンやグルコース・インスリン・カリウム療法の評価に関する論文は除外した。

 入院患者のIITの有効性とIITに伴う低血糖のリスクを評価するため、「死亡」「心血管イベント」「うっ血性心不全」「後遺障害」「創感染」「敗血症」「透析を必要とする腎不全」──のアウトカムのうち1つ以上を含むランダム化比較試験(RCT)を対象とした。IITが術前または術後すぐに開始されて術後24時間以内に終了したものを「周術期の研究」とした。

 1次アウトカムは短期死亡で、28日以内または入院中の死亡と定義した。2次アウトカムは90日または180日時点での死亡、感染、入院期間、低血糖とした。

 現在進行中の3試験を含む3055の論文が検索された。抄録を検討した結果461論文が対象の候補となったが、全文の再検討により最終的に対象となったのは31論文だった。

 1万4768症例を含む21のRCTをメタ解析した結果、IITは短期死亡に影響しなかった(相対危険度[RR]:1.00、95%信頼区間[95%CI]:0.94-1.07)。研究間の不均一性はなかった(I2=0.0%、P=0.46)。各群で達成された血糖値や糖尿病患者の割合で層化しても同様だった。13研究の解析の結果、IITは90日または180日での死亡を減らさなかった(RR:1.06、95%CI:0.99-1.12)。

 ICUで行われた全12研究のメタ解析の結果、IITは短期死亡に影響しなかった(RR:0.98、95%CI:0.89-1.09、I2=36%、P=0.10)。
 

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