日経メディカルのロゴ画像

NEJM誌Online版速報
強力な脂質低下療法を行っても大動脈弁狭窄症は改善せず
シンバスタチンとエゼチミブを併用、虚血関連イベントは減少するも癌が増加

 大動脈弁狭窄症の弁尖における組織病理学的変化は、血管におけるアテローム性動脈硬化症の変化と同様の炎症性変化であることが知られている。弁膜のこの変化は、血管の閉塞や冠動脈疾患の徴候がなくても、心血管死や心筋梗塞のリスク増加と関連する。

 疫学や遺伝学、さらに基礎医学的研究から、アテローム性動脈硬化症と同様に脂質低下療法が大動脈弁狭窄症の進行を防ぎ、大動脈弁置換術の必要性を減らせる可能性が示唆されている。大動脈弁狭窄症に対するスタチンの投与を評価した、後向きあるいは小規模な症例対照研究のほとんどが有効性を立証した。しかし、前向き無作為化試験では有効性が認められなかった。

 そこで、Aker大学病院(ノルウェー)のRosseboらは、症状のない軽症から中等症の大動脈弁狭窄症患者を対象にシンバスタチンエゼチミブの併用による強力な脂質低下療法を実施、臨床上およびエコー所見上の転帰を評価した。結果は9月2日付けのNew England Journal of Medicine誌Online版に掲載された。

 The Simvastatin and Ezetimibe in Aortic Stenosis(SEAS)試験と命名された本試験の対象は、年齢45~85歳、無症候性で軽症から中等症(ピークの大動脈弁位血流速度で2.5~4m/s)の大動脈弁狭窄症の患者。冠動脈疾患、末梢動脈疾患、脳血管疾患、糖尿病などにより脂質低下療法の適応となる症例を除外した1873例を、40mgのシンバスタチンと10mgのエゼチミブの併用(実薬群)、もしくはプラセボ(プラセボ群)に無作為に割り付けた。全症例が最低4年間の追跡を受けた。

 一次アウトカムは主要心血管イベント(心臓血管死、大動脈弁置換術、大動脈弁狹窄に基づくうっ血性心不全、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症が原因の入院、冠動脈バイパス術[CABG]、経皮冠動脈インターベンション[PCI]、非出血性脳卒中からなる複合事象)とした。

 主要二次アウトカムは、大動脈弁関連イベント(大動脈弁置換術、大動脈弁狹窄に基づくうっ血性心不全、臓血管死)と虚血関連イベント(心臓血管死、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症が原因の入院、CABG、PCI、非出血性脳卒中)とした。他の二次アウトカムはエコー上の大動脈弁狭窄の進行および被検薬の安全性とした。

 中間値で52.2カ月の追跡期間中、一次アウトカムは実薬群で333例、プラセボ群で355例に起こり、有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.83-1.12、p=0.59)。この間、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)は実薬群で53.8%、プラセボ群で3.8%低下した(p<0.001)。

 同期間に大動脈弁位ピーク血流速は実薬群で0.15±0.01m/年、プラセボ群で0.16±0.01m/年進行した。これらは圧力勾配に変換すると、それぞれ2.7±0.1mmHgと2.8±0.1mmHgであり、差を認めなかった。

この記事を読んでいる人におすすめ