日経メディカルのロゴ画像

心不全のチーム医療・病診連携構築への試行錯誤●その4
間違った食事指導の危険性
「油っこいものは避け、体重は増えないように」は正しいか

2010/12/09

 10月15日公開の本連載「心不全と低体重――栄養評価について」の中で私は、慢性心不全患者は低栄養であり、介入が必要であると述べました。ただ、心不全の栄養改善指導は単純ではなく、理論構築もこれからという分野です。

 現在、心不全患者に対する食事指導の主流は、「油っこいものを避け、体重が増えないように」というものだと思います。しかし個人的には、この方針は現代社会では若干補正が必要ではないかと考えています。

 確かに肥満は、心血管イベント発症の危険因子です。しかしいちど心不全を発症してしまうと、低体重であるほど予後不良です。10年以上前なら、亡くなられていたような患者さんでも、入退院を繰り返してやせていきながら生存している――。現在の慢性心不全の患者さんは、このような経過をたどることが増えています。

 われわれの施設で心臓リハビリを行っている患者さん120例を対象に、体重の変化を調べてみました。すると、観察期間1.5年で体重は約0.5kg、有意に増加していました(観察開始時:61.6±12.2 kg vs. 観察終了時:62.3±12.2 kg、P<0.05)。

 しかし個々の患者さんで見てみると、体重が5kg増加した患者さんもいれば、5kg減少した患者さんもいます。そこで、体重の変化と血清アルブミン値の変化をプロットしてみると、相関関係を認めました(図1A)。また、体重の変化は脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値の変化と逆相関していました(図1B)。つまり、体重が増加した方が血清アルブミン値は上昇し、BNP値も改善していたことが分かりました。

 われわれの以前の検討では、血清アルブミン値はBNP値と独立した予後規定因子でしたが、両指標ともに体重が増加した方が改善していたわけです。さらに、ヘモグロビン値も体重が改善した方が、増加していました(図1C)。

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

この記事を読んでいる人におすすめ