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急性心不全の腎機能悪化の主因に関する新知見
腎保護効果と血流動態の改善、優先するのはどちら?

2009/05/01

 急性心不全患者において、観察開始時の腎機能低下は心臓とは独立した予後規定因子であることが報告されています。従って「心腎連関が重要」といわれており、点滴BNP製剤であるネシリチドが急性心不全患者において、腎機能を改善するかどうかについての検討が行われています。

 しかし、理論的には腎保護が期待されるはずのナトリウム利尿ペプチド製剤ですが、実際の試験では、ネシリチドの急性心不全患者に対する腎保護効果は認められていません1,2)

「腎機能悪化の主因は腎鬱血」の論文相次ぐ
 急性心不全患者における腎機能悪化の原因は、(1)心不全と腎動脈狭窄、腎硬化が同時進行している、(2)血行動態の悪化によるさらなる腎機能悪化、(3)アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、利尿薬などによる薬剤性の悪化――などに分類されます3)

 このうち(2)について、血行動態のどの部分が、さらに腎障害を惹起しているのかについては、「心拍出量低下による腎血流低下が腎機能悪化の主因」だと、つい最近までは考えられていました。

 しかし最近1年の間に、腎鬱血が主因であるという論文が相次いで発表されてきています。海外の学会でも「腎鬱血は、急性心不全患者にさらなる腎機能悪化を生じる主体である」ことについて、コンセンサスが得られつつありますので、今回はこれについて述べたいと思います。

 私が把握している限り、腎機能と静脈鬱血の関係を検討した最初の論文はDammanらによって2007年に発表されたものです。51症例の検討において、右房圧は腎血流とともに糸球体ろ過量(GFR)の独立した規定因子と報告されています4)

 その後、急性心不全患者におけるSwan-Ganzカテーテルの意義を検討したESCAPE試験()のサブ解析において、eGFRと右心カテーテルで得られる指標との相関が検討され、eGFRは右房圧と相関を認めるが、心係数(CI)とは相関しないことが報告されました5)

著者プロフィール

佐藤幸人(兵庫県立尼崎病院循環器部長)さとうゆきひと氏。 1987年京大卒。同大循環器内科入局、94年に京大大学院修了。同科病棟医長を経て、2004年から兵庫県立尼崎病院循環器内科に勤務。 07年より同科部長。研究テーマは心不全のバイオマーカーなど。

連載の紹介

佐藤幸人の「現場に活かす臨床研究」
専門の心不全だけでなく、臨床全般に興味がある。過疎地の病院での臨床経験もある。そんな佐藤氏の持論は、「医療とは患者、家族、医師、パラメディカル、メディア、企業などが皆で構成する『社会システム』だ」。最新の論文や学会報告を解説しつつ、臨床現場でそれらをどう活かすかを考える。

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